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第5話

jmー空を見上げて
325
2018/10/07 15:31

























空を見上げた時の
貴方の綺麗な横顔。
貴方のにこ、と微笑む優しい糸目。
貴方のその後に目を瞑る美しさ。
貴方の喉に突き出てる喉仏の妖艶さ。

そして空へ手を伸ばす君の神々しさ。






































「あなた」
『なに?』
「夕日なんてずっと沈まなければいいのにね」
『どうして?』
「夕日が沈めば暗くなって
あなたの事も見えなくなっちゃいそうだから」

彼はよくそんなことを言う。
見えなくなる、
私はここにいる。

『私はここに居るから』
「家に帰らないとでしょ、暗くなったら」
『うん、そうだね』
「あなたが僕の横からいなくなって
もう戻ってこないんじゃないか、って不安になる」
『だったら家に帰らないで一緒にいる?』
「家に帰らないと駄目でしょ」
『そんなふうに私は愛されてないよ』














貴方と同じだから。


貴方には親がいなくて愛されることはない。

私には親がいても愛してくれない。



元は違くても


愛されてないことは同じだ。

だからこうやって一緒にいる。




「寂しい?」
『少しね』
「ほんとに?」
『…寂しいよ』
「僕も寂しい。」
『今日はまだ夕日は沈まないから
あっちの山に登ろっか。』
「どうして?」
『ジミンは空が好きでしょ?
少しでも高い所に行って
その好きなものに近づけば少しは
寂しくなくなるかな、って。』




「あなたは何が好きなの?」

『ジミンだよ』




「じゃあ、もっと近づこうか」





















『ん……………』































































貴方と初めてキスをした日






「夕日が沈み始めてる」
『…ほんとだ』
「帰ろっか」
『どうして?』
「帰らないと」
『今日は帰らない』
「駄目だよ」
『やだ』
「あなた」
『………』
「…帰ろっか」



貴方はそう優しく微笑んだ。
今、貴方と離れてしまったら
どこか今度は貴方が戻ってこなさそうで
消えてしまいそうで…怖かった。





『ジミン』
「どうしたの」
『私は絶対にジミンの傍から離れないよ。
だからジミンも絶対離れないで。消えないで。
………お願いだから、っ』

「………今日はもう帰ろう。疲れたでしょう」


































せめて、何か言ってほしかった。

" 帰ろう "

そんな言葉…いらない。
ただ貴方が欲しかった。
貴方に傍にいてほしかった。
私が消える、戻ってこない、とか
言ってたくせに…






















どうして貴方は

私の前から消えたの…?


























































あれから何年経ったのだろうか。

貴方が消えた日から13日間
毎日行ったのに貴方は1度も現れなかった。
夕日が沈むまでいたのに…
貴方は今どこにいるの?









あれを青春と呼べるものならば
私の青春はとても儚いものだったな。

あの思い出の場所にもあれから
一度も行っていない。

今日は仕事が休みだ。
少し行ってみよう。

























思い出のその場所につけば
何も変わっていなかった。

ジミンがいた時に毎日毎日
空に手を伸ばしていたその場所に立ち、
私も同じことをした。





立ったまま上を向く。

空が青く綺麗に染まっていて
それはそれは綺麗で儚いものだった。
ジミンがいなくなった日も
このくらい綺麗だった。

その綺麗さに頬が緩んだ。

ジミンの微笑みも今の私と同じだったのか。

そして目を瞑る。

目を瞑れば風をさらに感じ、
頭の中で思い出が蘇る。

ジミンはあの日、頭の中には何があったの?




その答えはきっと知る時が来ても
知らなくていいかもしれない。





手を伸ばす。

上を向けばすぐそこにあるのではないか、
と思うように広がっている空。
触れられそうで触れられない。
焦れったく、だけどその世界観が
私を震わせた。





















ここはキスした場所でもあるんだ。

その場面も蘇り、頬に生ぬるい液が伝った。
涙だ。

やめてほしい。



泣いたのも
あの日からの13日目以来だ。
ジミン。貴方は今どこにいるの?



会いたい







そう心の中で願った。
























































「あなた」





















































幻聴だなんて思わない。

本物のジミンの声だ。




振り向けば、あの日よりも
さらにかっこよくなっている。

大人びた背は
私だけ時が止まっていたかのように
感じて寂しく思えた。



でもきっとその寂しさは
なによりも








貴方がいなくなって

貴方に愛されなくなっていた寂しさだ。











どうしていなくなったのか。



そんなの今はここにいるんだから
どうでもいい。

今はただ、貴方がここにいる幸せを感じていたい。





『会いたかった……ずっと…ずっとずっと……』


さっきよりも涙がぽろぽろ溢れ出る。
貴方に会えた嬉しさが
きっと今までで一番の幸せだろう。









「あなた…」
『…なに、?』




「あなたは何が好きなんだっけ?」







少し潤んだ目でそう私に言った。

いつか、似たような事を聞いた。










『ジミンだよ』



































































「じゃあ、もっと近づこうか」














































今を大切に

今を幸せと感じて





貴方と出会えた事は

小さそうで大きい。











君とのキスだけは変わっていなかった。


































































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空
みなさん、こんにちは!
空
空です!
空
少し思いつかなかったので
自分の名前の空 (本名ではないです) を使ってみました
空
私は、あまりどんな場面なのか、とか詳しく書かないので理解し難いかも知れませんが、逆にそれを楽しんでいただけたらな、と思っています。
空
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