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第15話

さよなら
52
2021/01/29 10:17
最終話「さよなら」

壱星から貰った四つ葉のクローバー
黄昏時に起きた小さな奇跡

視線を交わし、言葉を交わす

里)俺がこの館を出て、どれくらい経った?
大)15年になるか、長いな...

里)この部屋はあの頃のままなんだね。
大)いつ帰ってきても大丈夫なように、な。

少し言葉を濁す大を見て微笑む

大)何があったのか、聞いてもいいか?
里)そうだね、話すよ思い出した事全部。





10年前...

黄昏館へと帰るため乗合馬車を乗り継ぎながら
村を目指していた

途中、盗賊に襲撃を受けてもなんとか撃退し
旅を続けていたのだが、、

途中立ち寄った町で引き止められた

)旅の方に頼むのは申し訳ないのですが、
隣町まで荷を運ぶのに護衛をお願いしたいのです。

今いる町から隣街への街道は山越えのルートしか
なく盗賊に襲われやすいのもあり護衛を頼んできた

里)向かう先は同じですし、構いませんよ。

どうせ通る道、困っているのだから助けようと
引き受けた

次の日の朝、

子供)私もいく!
)駄目だ、危ないんだから。
子供)行くったら、行くのぉ!

ぐずる子供に困り果てる商人

)駄目ったら、駄目だ!!
子供)うえ〜ん!

里)あの、大丈夫ですか?
)すみません、大丈夫です行きましょう。
)悪いがこの荷物ものせてくれ。
)いいですよ。

子供)| |д・) ソォーッ…・・・

少し遅れて町を出る
荷馬車に乗せてもらいながら
山越えのルートを進む、
荷を引きながらなのでゆっくりと進んでいく

ガラガラ、、

里)雲行きが怪しいな...

空を見上げては雲行きを見る、
黒い雲がかかっていた、、

)山の天気は変わりやすい、急ぎましょう。
里)そうですね。

速度を少しずつあげながら、先を急ぐ

里)何事も無ければ良いんだけれど。

この不安が現実になる、中腹に差し掛かった頃

)この先は道がほそくなっているので、
馬を引いて歩かないと。
里)なら、俺が後ろを見ますね。
)お願いします。

慎重に進んでいく、その時だった

ポッ、ポッ、ザァッ!!

)降って来た!
里)落ち着いて渡りましょう!

荷馬車スレスレの崖を慎重に進んでいく

ピシャァアアン!!!⚡️

ヒィィンン!!!

)うわぁ!
里)大丈夫ですか!!

突然の雷に馬が驚き握っていた手綱が離れる
パニックになった馬は暴れ、荷車が揺れる

里)くっ!(荷車にしがみつく)

)きゃあ!

荷馬車の中から聞こえる子供の声

里)なっ!どうして、荷馬車の中に!
)リサ!まさか、隠れてついて来たのか!

リサと呼ばれた女の子、
町を出るときにぐずっていたあの子だ

車輪の片方が崖へ落ちる

ガタ、ガタン!!

里)しっかり捕まるんだ!離してはいけないよ!
リサ)うん!!(ギュ、と木箱にしがみつく)

ヒィン、、

)どう、どう。

馬をなんとか落ち着かせることが出来たのだが

)大変だ、脱輪してる。

荷物を乗せた荷馬車の車輪がひとつ脱輪している為
重心が傾いていく

里)荷物が乗ってる状態じゃ、
脱輪をなおすのは無理そうですね。

困っていても雨は降り続ける、
下手すれば崖が崩れる可能性もある

)おもいっきり引けば上がるかもしれない。
里)やってみますか?
)やるしかないだろう、後ろからも押してくれ。
里)分かりました。

馬を使い勢いよく荷馬車を引くことに
後ろから押せるように里津花も立つ

里)いつでもいけます!
)いくぞ!それ!!

ブルルル、、

馬がゆっくりと引いていく、

里)くっ、いけぇ!

里津花も力一杯押していたその時、

ガラ、ガラガラ!!

)いかん!落石だ!!

上からの落石、それは荷馬車の屋根を吹き飛ばした

バキバキィ!!

リサ)きゃああ!!

その衝撃でリサの体が浮き、外へ

里)リサちゃん!!

パシィと手を掴み後ろへ引く、しかし...

リサ)里津花さん!!

里津花は反動で崖に投げ出され、、

里)(ごめん...)

そのまま崖下へと落ちて行く、、、

ガラガラ!!

リサ)いやぁああ!!

落ちて行く最中、よぎるのは

里)(会いたかったな)

未だに待ってくれているであろう後姿を思い出し
ながら、意識は途絶えた




里)そして気づいたら俺は黄昏館を目指して
旅をしていた、そしてやっと辿り着いたんだ。

大)...そうか、そうか...
里)...泣かなくてもいいのにw

大)泣いてない。
里)何その強がりw

大)・・・ふっw
里)・・・ふふっw

沈黙に笑みが溢れる、

里)こうして、会えて...良かった。
大)里津花!?

里津花の姿が薄れていく、、
窓の外を見ると夕日が沈もうとしていた

里)時間切れ、みたいだね。
大)里津花、おれっ!

「俺も一緒に」その言葉は冷たい指に塞がれて

里)駄目だよ、大には未来に行って欲しいから。
大)ズルイな、お前はいつもそうだ。
里)ズルくてごめんね。

最後に告げる言葉は決まっていた

里)さよなら、大。
大)...さよなら、里津花。

その言葉と共に里津花は光となって消えてゆく
最後まで笑顔のままで

そして、大だけが残った

大)また会える...きっと。

いつの日か終わる時、
優しい手が差し伸べられるその日まで




終わり

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