第10話

約束のクローバー
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2021/01/29 10:04
第10話「約束のクローバー」


〈14年前〉

壱流)四つ葉のクローバー?
壱星)うん、見つけると幸運になるらしいよ。
壱流)幸運..か。
壱星)俺が元気になったら、一緒に探しに行こうか。
壱流)いいなそれ!約束なw
壱星)うん、約束。

幼い兄弟の約束、病弱な壱星にとっては
切なる願いでもあった

ある日、雨続きで気温が下がり熱で寝込みがちな
壱星を心配した壱流は四つ葉のクローバーを探しに
1人であの池のそばまで来ていた

壱流)無いなぁ...四つ葉、四つ葉...

探しても探してもあるのは三つ葉ばかりで
途方に暮れていた、どうしても見つけたいのに

壱流)プレゼントすればきっと...

都会の屋敷にいた頃、
医者と両親が話しているのを聞いた

「彼は長くは生きられないでしょう」
「そんな...何とかなりませんか?!」
「奇跡でも起こらない限り、無理でしょうな」

壱流)奇跡...は無理でも、幸運をプレゼントするんだ。




〈黄昏館〉

目が覚めた壱星、いつもは側にいる温もりが
今は無い

壱星)壱流?(見回しながら)

コンコン、

大)ん?起きてたのか、壱星。
壱星)大さん、壱流は?
大)そう言えば、見てないな。
壱星)どこに行ったんだろ。

窓の外を見ると、雨が降っていた




〈池のほとり〉

壱流)クシュンっ、、寒い、、

未だに四葉のクローバーは見つからない
雨も酷くなり体も冷えてきた

壱流)もう少しだけ、もう少し探してみよう。

諦めきれなくて、探し続ける
ふと、池に浮かぶ浮島に目を向けた時だった

壱流)あ...あった!あれだ!!

浮島の端に少しだけ咲いている白詰草、
その葉の中に四葉のクローバーが見えた

壱流)手を伸ばせば...もう少し..うわぁ!

気づいた時にはもう遅い、、
冷たい水が壱流の体力をどんどん削っていく

苦しい...冷たい...

壱流)ガボッ、ぁ、、

意識が遠のく、その中でも強く思うのは

壱流)(壱星...)

たった2人の兄弟





それは悲しい知らせだった、
壱流が居なくなって、捜索隊が編成される
森の中や森を出た郊外まで足を伸ばし探していた

そんな彼らが黄昏館へ帰ってきたのは
夜になってから、冷たい壱流を連れて...

志)池で溺れたようだ。
大)....壱流。

この知らせを壱星も聞いていた、

壱星)嘘だ...壱流が..死んだ?朝は元気だったのに?
なんで..なんで、なんで壱流なんだ!!!!

大)落ち着け、壱星。
...でも、何で雨の中池になんて。
志)これを探していたようだ、
見つけた時頑なに握りしめていた物だ。

そう言って志季が見せてのは、
握り締められてヨレヨレになってしまった

四葉のクローバー

壱星)あ...ああ..俺のせいだ、
俺が四葉のクローバーの話なんてしたから!!
っ!ゴホっ!
大)壱星!
志)薬を飲ませて眠らせろ、
このままだと体に良くない。

・・・

〈現在に戻り〉

壱星)これが、俺から話せる全てです。
壱流)うん、俺が思い出したのもそんな感じ。

里)でも、その..壱流くんの事はわかったけど。
壱星くんはいったい、死んでないよね?

壱星)はい、俺はまだ生きています。
ここ数年になってから俺は死者の霊が見えるように
なりました、きっと死が近いからだと思います。

英)つまり今の壱星くんは生霊って事か。
壱星)その認識で合ってると思い..っ!

突然壱星の体が歪んだようにぼやける

壱流)壱星!
里)どうしたの!!

壱星)どうやら、俺にも時間がない..みたいです。

その言葉の意味するのは...

つづく

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