第7話

訪問客
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2021/01/29 09:53
第7話「訪問客」

里津花と壱流そして英知が黄昏館に滞在し始めて
数日が過ぎた、
未だに大との仲は良くないが、
壱星のもてなしもあり特に困った事もなく日々を
過ごしていた

ある日の午後、この館に客人が訪れた

カン!カン!

志)大!大はいるか!
大)大声を出さなくてもいる、志季。
志)医師としての生存確認だ、許せw
大)はぁ、いつもすみません。
志)往診も仕事だ気にしなくていい。

玄関での会話を階段の上から聞いていた2人

里)お医者様、みたいだね。
壱流)病人がいるって言ってたもんな。

そのまま2人はキッチンの先にある部屋へ
行ってしまった

里)往診に来るって事は寝たきりなんだね。
壱流)そういや、昨日から壱星を見てないな。
英)そういえば、見てないね。
里)俺も見てないよ、
看病をしてるのかもしれないね。
壱流)つまんないの、
ここに来ても噂みたいな事起きないしさ。
里)そうだね、
数日が経ったけど何も起こらないし、
そもそも噂じたいが嘘だったのかもしれないね。

亡くなった人に会える、
それに希望を見出し訪れたのにそのような
兆しさえも見えない日々が続き心の何処かでは
嘘なんじゃないかと思い始めていた

里)あと数日したら、
ここを出る事も考えないといけないね。
壱流)...なぁ、庭見てみないか?
ここにいても暇だし。
里)...うん、そうだね。そうしようか。

壱流の提案で庭へ向かう事に

里)この前も思ったけど、バラの花がこんなに...
壱流)来た事あったんだ。
里)ちょっと、ね。

ゆっくりと見て回る、すると

壱流)あれ、あそこだけバラじゃない。

壱流の指した花壇にはバラではなく
白詰草が植えられていた

里)白詰草か、わざわざ植えてるみたいだね。

ふと顔を上げるとその花壇の前に窓があった

里)あの部屋からこの花壇が見えるように
なってるんだね。
壱流)あの部屋ってキッチンの奥にある部屋だよな?
確か病人がいる方の。
英)そう言われればそうかも。

ふと窓が開いていたのか、声が微かに聞こえた

志)...だいぶ進行しているな、
本当に手術はしないのか?
大)延命は受け入れているが、手術は頑なに拒んでる。
志)まさか...まだ待っているのか、迎えにくるのを。
大)おそらく。
志)お前といい壱星といい、
亡くなった人間に会えるわけないだろうに、
そんなにこの館の噂に縋りたいのか。

大)...
志)だんまりか、いいか?亡くなった人間は帰ってこない、たとえ会えたとしてもそれはまやかしだ。
大)...分かってる、どうにもならないのは。
だけど、それでも...もう一度会いたいと思うのは
間違ってるか?
志)限度があると言ってるんだ、このままだと
この子は数日も持たないぞ、病の進行が早すぎる。

〈聞き耳を立てて〉
里)そんなに酷い病気なんだ..
壱流)どんな奴なんだろ(胸騒ぎがする)

様子を伺っていると、病人が目を覚ました

)怒らないで下さい、志季先生...
大)起きたのか、壱星。
壱星)いつも迷惑をかけてすみません、大さん。
大)気にしなくていい。

窓から様子を見ていた3人は驚く
3人の世話をしてくれていた壱星が病人で、
さらに寝たきりだったのだ

壱流)なっ!!
里)壱星くんが...病人?
そんな、あんなに元気にそうだったのに...
どうゆう事?
壱流)っ!(窓枠に手をかけて)

里)壱流くん!?何を!
壱流)どうゆう事だよ、壱星!!
お前が病人って、何かの間違いだよな!!
英)駄目だよ!壱流くん!!

志)丁度いい、壱星..手術を受けろ。
壱星)すみません、志季先生。
俺はこれ以上、長く生きるつもりはないんです。

壱流の存在に3人は気付かないのか、
返事どころか壱流を見ようともしなかった

壱流)なんだよ、、どうなってんだよ!!

壱流の叫びは虚空に響き渡る
その存在を否定するかのように



つづく

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