神の国から人間界に移動した私たち3人は
辺りを見回してみる。
今まで消えていた記憶が少しずつ
色を取り戻していく。
コンコン。先生と呼ばれた彼はあなたの
家のドアをノックする。
ドアを開けたあなたの母と挨拶を交わす。
母は黙って、綺麗に包まれた手紙を
彼に手渡した。
「高木先生…今まで娘を大切にして頂いて、
本当にありがとうございました。」
震える声であなたの母は声を絞り出した。
静かに一礼して彼、高木直人はあなたの
家を後にした。
ノウドはあなたに問いかける。
ノウドの言葉が終わる前に
あなたは走り出した。
推し様に会いたくて、
元気かどうか確かめたくて。
あなたは3年前既に海にのまれて
亡くなっていた。
しかし、あなたは自覚していないようだ。
自分が死んだ事を。
そんな哀れな新人守り神をノウドとサアドは
声をかけることができないまま見つめていた。
泣き崩れるあなたを抱えて、3人は
神の国に帰った。表情を失った彼女は
その日死んだように眠ったそうです。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!