私が戻ると給水が終わり、ゲームが始まる。向こうのスタメンには、はじめとシルクがいる。ま、私もスタメンなんだけど。挨拶をして、ホントに試合が始まる。ジャンプボールは、いつも先輩がするのに、今日は何故かしないそう。だって相手が……
……はじめだから。そして、突き出されたのが……私。まぁ、別にいいんだけど、顔合わせしにくい。そう思っていたのに……
……なんで?私は緊張していたのにはじめは全然じゃん。なんかモヤモヤする……。
そんな事を思っているうちに、審判が始める。あっ、しまった……!ばっと上を見てみれば、高く上げられたボールが落ちているところだった。はじめは、ジャンプをしようとしている所だった。大丈夫、届く……!ジャンプをしてボールを取りに行けば、ボールに手が届き、先輩にボールを渡せる。よし、届いた。
パスに困っている先輩に手を挙げて私がいることを伝える。先輩は、そんな私に気付いてパスをする。それは上手くいったけど……
……シルクがディフェンスにいた。ヤバいな……と思いながらも、シルクを抜けるようにしてみるが、シルクはそれをことごとく防ぐ。入るか分かんないけど……一か八かだ。そこは、スリーポイントシュートの所だった。だから、あの体育の授業の時みたいに、シュートをする。そのシュートは……入った。
シルクは悔しそうにそう言う。ふっふっ、私はこのためにスリーポイントシュートを特に頑張ったんだから。
そのまま試合は続行されたんだけど……
……ことごとく負けてしまった。前半はめちゃくちゃリードしていたのに、後半はもう……ね。悔しい!
私の後ろから、はじめの声が聞こえる。顔だけ振り向いて、
と告げる。あーもう!なんでこんなにモヤモヤするの?そう思っていると、シルクがいきなり私の手を掴む。えっ、ちょ、手……顔が熱くなる。
シルクが私を引っ張ってどこかに連れていく。連れてこられたのは、体育館を出てすぐの所。
シルクは背を向けているから、表情は見えない。シルクにはバレちゃったか……。
こっちを向いて、シルクが言う。はぁ……最悪……
真っ直ぐ見つめられたら、話すしかなくなる。溜め息をつきながらも、話し出す。話終わると、シルクは何かを考えているようだったけど、すぐに
言われてみれば、そうかもしれない。
なんて言われるけど、そんなのは私には分からない事だ。
ニカッと笑ったシルクの顔はとても勇気が貰えた。
微笑んで手を振れば、シルクも手を振り返してくれた。そして、私は体育館に戻る。
嘲笑しながら、1人呟くシルクの事は知らずに……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。