少し説明を聞けば、はじめと別れてシルクとのデートが始まる。
二人っきりになると、結構恥ずかしいな……と思う。そんな私にシルクは顔を覗き込んでデコピンをする。
私が痛いと訴えながらおでこを押さえれば、ケラケラ笑って、
なんて言うもんだから、私は少し顔を赤くして、
また意地を張って可愛らしくないことを言ってしまうけど、シルクはケラケラ笑ったまま、
と言う。この笑顔と対応にどれだけ救われるか。シルクはしらないだろうな。
遊園地にある大きな時計を見てシルクが言う。今は11時20分。昼までは時間があるけど、アトラクションに乗れば大幅に時間は過ぎる。
話し合いは終わり、お昼ご飯を取ることに。近場のレストランに入り、注文をする。私はオムライス、シルクはカレーで。待ってる間、他愛もない話をしていればあっという間にオムライスとカレーがくる。
いただきます、と声を揃えて食べれば、とても美味しくて。少し会話を挟みながら食べていたらシルクが、
じいっと私のオムライスを見てると思ったらそう聞く。
それだけ欲しかったのか即答されたのが面白くてクスッと笑い、お皿を差し出す。シルクは普通にそのお皿を受け取ると、スプーンで1口。すると、顔をぱあっと明るくさせて、
なんて言う。その光景を見てクスッと笑う。だって、なんか小さい子供みたいだもん。
それからご飯を食べ終わり、お会計。割り勘かなと思って出したら、それを防ぐように出されたお金。えっ、と思いシルクを見れば、ニカッと笑って
なんて言われる。けど、申し訳ないよ。そう言おうとした時にシルクは察したのか、私の頭を撫でて
……これはズルいよ。そう思いながら、レストランを出る。どこに行こうか、と話していた時。
シルクが指差す方向を見てみれば、お化け屋敷が。えっ……お化け屋敷……
ニヤニヤしながら顔を覗き込むシルクに意地を張る。まぁ、本当は……全っ然無理なんだけどね?そう思っている間にも、お化け屋敷の方に足を進めるシルク。それにゆっくり着いていく。正直めちゃくちゃ怖い……
心配そうに顔を覗くシルク。どんだけ優しいんだ……と思いながらも少し笑って、
と言う。口数少ないまま並んでいれば、私達の番が来て。係員さんが少し説明をして、それが終わると中に入る。暗いところに少し入った時、シルクが私の手を握る。驚いてシルクを見れば、
なんて言ってくれる。暗い上に、シルクは前を向いているからその表情は見えない。でも、私の顔はきっと耳まで真っ赤。不思議だな……さっきまでこの中から悲鳴が聞こえてたのに、今はシルクの声と自分の胸の鼓動しか聞こえない。
と言うシルクにこくん、と頷けば前に進むシルク。お化け(役の人)が出てくる度に、びくっと肩を跳ねさせながらシルクの手を強く握る。でも、何故か悲鳴とかは出なかった。
あっという間に終わったお化け屋敷。シルクは顔を背けたまま、
と言い行ってしまった。その耳が真っ赤だったのは気のせいかな?そう思いながらシルクの背中を見つめる。意外と大きくて、逞しくて、優しいあの背中の温もりを私は知っている。私はそんな彼の背中が大好きだ。
【シルクside】
あーもう、やっちゃったよ俺……トイレの鏡の前でしゃがみこむ。今顔を見てみれば、やっぱり真っ赤で。それが分かってたから○○に顔を見せられなかった。
自分の左の掌を見つめる。こっちの手で、手を握った。小さくて、女の子らしい手だった。お化け(役の人)が出てくる度に、手を握ってきたことを思い出す。
決心したくせに、なんで自分が赤くなってんだよ……ふぅ、と息をついて落ち着かせる。また鏡の前に立てばいつもの俺。
小さく呟くと、○○の元へ戻る。ベンチに座って、つま先を見ている○○。よくナンパされてねーな、と思いながら近付く。
と言えば顔を上げて微笑み、
……だから狡いって。自分の顔は赤くなってないか心配だけど、同じように微笑んで、
と言えば、ベンチから立ち上がり、隣に並ぶ○○。やべ、手繋ぎたくなってくる。それを抑えながら歩いていれば、流石に行き先が気になったのか、俺を見上げて
と聞いてくる。自然と上目遣いになるこの身長の差は心臓に悪い。それでもなんとか抑えてふっと笑い、
と言った。これは、俺の戦い。ちゃんと向き合わねえと、な?
【あなたside】
お楽しみ、って……本当にどこに行くんだろ。気になりながら来たのは路上。色んな人が来ているけど、ほんとに何これ?と首を傾げていれば、
苦笑しながら言うシルク。鈍い?私が?
ぐいぐい迫って言えば、少し顔を赤くして、顔の前に手を出し焦りながら
そんなシルク見たことなくて、クスクス笑っていれば、どこからか楽しい音楽が聞こえてくる。なんだろう、と思い見てみれば、ここの遊園地のキャラクターや、色んな格好をした係員さんが出てくる。もしかして、と思いシルクを見ると、にっと笑って、
なんて言う。ショーなんかあるんだ!と目を輝かせて、しばらくショーを見ていれば、自然と笑顔になってくる。
ショーに向けていた目を、シルクに向ける。前を向いていたシルクが私の方を向く。
頬に手を添えながら私に聞くシルク。私の顔は多分赤いけど、シルクの顔は真剣そのもので。
と、目だけを逸らせば、シルクが言葉を続けようとする。その時、遊園地にある時計に気付いて見てみれば、はじめとの待ち合わせ時間まであと5分。あそこまでかなり遠いところにいるから、走ってもギリギリ間に合わないかもしれない。
赤い顔のまま言えば、シルクはハッとしたように時計を見ると、
と笑う。けど、その笑顔にが悲しそうに見えて……なんでそんな悲しそうなの?と言おうとしたのをやめて、
ニコッと笑って言えば、顔を赤くして私の頬から手を離した。そして、いつもみたいに笑って、
と、言ってくれた。
走り出しながらそう言って、急いで待ち合わせ場所に向かう。
悲しそうな顔をして1人呟いたシルクのことは知らずに……
✄--------------- キ リ ト リ ---------------✄
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。