玲於 said
俺は無意識にアイツの胸ぐらに掴みかかってた
俺の言葉にアイツは目を見開く
そこまで言うと、俺は胸ぐらから手を離した
すると、アイツは力なく地面に崩れ落ちる
俺がそう言うと
みんなの所にいたあなたが駆け寄ってきて、力なく座り込むアイツに強く抱き着いた
あなたの言葉を聞いた途端、アイツの目からは大粒の涙が流れ始めた
“すまない“ “すまなかった“
アイツはただただその言葉を繰り返しながらあなたを抱き締めてる
ギュッ
そんな状態の父親をあなたは優しく抱き締め続ける
その姿は誰が見ても親子そのものだった
全てが終わり、俺らは乱桜組を後にした
AKIRAさんたちとも別れ、自分たちの家に帰ってきた
いつの間にか1階の部屋にみんなが集まってそんな話をしてる
乱桜組を後にする前、慎たちから今後の乱桜組の事とあなたの事について話された
まず、あなたの父親にはしばらくの間体を休めてもらう事
父親の看病はあなたに任せる事
その間、乱桜組の事は慎たちがトップの代わりをする事
そして、今後の乱桜組の事はあなたと父親の2人で話すという事だった
涼太の言葉で全員の顔が曇る
……そうだ、もうあなたがここに居る理由が無くなる
あなたにとって、ここは逃げ場にすぎなかった
父親から、乱桜組から逃げるための場所だったんだ
でも、もう父親から逃げる必要はない
元のように父親と娘に戻れたのなら……
その場の空気に耐えられず、俺は自分の部屋に上がった
自分で言ったくせに、その言葉で心が締め付けられる
部屋に入った途端、抑えてた感情が溢れ出した
あなたが帰ってこないかもしれない
そう思っただけで、こんなにも胸が苦しくなるなんて思わなかった
最初はただ助けたかった
丘で出会った時のあなたが悲しそうな辛そうな顔をしてたから
そんな顔をさせたくないって思ったから
だから、ここを逃げ場だと思ってくれてても良かった
あなたを助けられるなら、それで良かった
でも、今は違う…
ここを逃げ場だと思って欲しくない
ここをあなたの “家“ だと思って欲しい、安心出来る場所であって欲しい
俺らの事を、ずっと “家族“ だと思ってて欲しい
その願いが叶わなくなるかもしれないなんて考えたくない…
考えただけで心の奥がえぐられて苦しくなる
俺は夜の間ずっと声を殺して泣き続けた
あれから数ヶ月が経った
今日はAKIRAさんたちと子供たちが家に来てる
変わらずあなたは帰ってきていない
父親の看病が長引いてるのか、それとも…
俺の表情を見てか不安そうに俺を見上げてる
この子はあなたの事大好きだったもんな
そう言いながら寂しそうに俯いた
俺は思わず、その子の事を抱き寄せた
嬉しそうに笑いながら俺に抱きついてくる
この子にあなたが帰ってこないかもしれないと伝えたらどうなるんだろ…
そんな事を考えながら1日があっという間に過ぎた
子供たちを送ろうとすると
AKIRAさんが1人俺の方に戻ってきた
困惑気味の俺を連れて、AKIRAさんはどこかへ向かった
連れてこられたのは、あの丘だった
隣をポンポンと叩かれ、俺はAKIRAさんの隣に並んで座った
少し笑いながらAKIRAさんは空に目を移した
ワシャワシャッ
俺の頭を優しく撫でながら、AKIRAさんはずっと俺のそばに居てくれた
何故かAKIRAさんには本心を隠さずに話せた
AKIRAさんは何も言わず、ただ俺の話を聞いてくれて
話し終わった時には、そう言って俺の肩を抱き寄せてくれた
……そうだ、思い出した
俺、出会った時にあなたに言ったんだ
“俺の事を信じて欲しい“ って
なのに、何で俺があなたを疑ってるんだ
あなたを信じるべきなのに…
AKIRAさんが満足気に笑って立ち上がる
そう2人で空の下で約束をした
それからまた月日が経ち、乱桜組での1件から1年近く経とうとしてた
それからも変わらず、あなたは帰ってこない
それでも、俺らはあなたの帰りを信じて前向きに生活してる
隼に言われ、外のハシゴを取りに1階へ降りた時だった……
入口に少女が1人立っている
1年近く離れていても変わらない優しい笑顔とその声
そして、星空のように輝く青い目
やっと、俺の大切な “家族“ が帰ってきたみたいだ




















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!