第125話

一番近くて一番遠い
1,209
2021/03/14 06:23


遠ざかって行く

あの頃よりもぐんと大きくなった

男らしいその背中を見て



身体が震えるようにあたたかくなった。





じわりと沁みてくるような懐かしさ。





川西「姉ちゃん逢いたがってたし また家来いよ」




また逢えるんだと思うと


久しぶりに心が自然と弾む





__________夏楓かえでちゃん……














~あなたside~







太一くんとは幼馴染みっていうのが正しいのかな、






クロと研磨も幼馴染みなんだろうけど


太一くんはもっと小さい頃からの付き合い。








私達は年が近かったから

よく "一緒に遊んで来い" って言われてた








でも2人とも人見知りだったし、



あまりすぐに馴染めるはずがなくて…








そんな私達を見て一緒に遊んでくれたのが





太一くんのお姉ちゃんだった。








初めて見た時、

自分とは全然違う世界に居る人だと思った。








スラッとしたスタイルに

綺麗なイヤリングがキラリと光っていて


小さい私にはただただ輝いて見えた。



















───────── ずいぶん前の事なんだ 。・*





最後に遊んだのはもう8年くらい前の事で……







───────────────────────







_______その人は夏楓かえでちゃんと言って


父の親友の子供だった








太一くんに会うのは楽しみだったけど


夏楓ちゃんと会えるのはもっともっと楽しみだった








2人に会えるのは決まって

父がその親友を訪ねる時








私の友達に会いに行くとか

そんな聞えのいい事ではなかったけど





父がその友人に会いに行く事になると


私はそわそわと嬉しかった。








当時の私は 相当人見知りだったし


静かだったし 流行りにも疎かったから


クラスには全く馴染めなくて



周りの言葉はどこか遠い異国のもののように


目まぐるしく追い付けなかった。








友達なんて居るわけなくて

いつもお兄ちゃんやはじめと一緒に遊んでいた






その2人としか遊べなかったし それでもいいと思っていた








夏楓ちゃんと逢うまでは________







今思えば

夏楓ちゃんがとてもお話上手だったんだろう








クラスのみんなは自分とは違う世界過ぎて


何も分からなかったけど、







彼女は… 彼女の言葉だけは……





私に近く、いつもちゃんと心の中に沁みてきた







お兄ちゃんでもはじめでもない人で



ちゃんと言葉が分かって… その会話に入れるなんて




あの時の私には全く珍しくて……







それは太一くんと夏楓ちゃんだけだったから。。









太一くんとは会うごとに

少しずつだけど確実に仲良くなった








そして夏楓ちゃんとは…


女の子同士っていうのもあるんだけど、


彼女はコミュニケーションが得意だったからか


もっともっと仲良くなった。







夏楓ちゃんはいつもふんわりと笑っていて




優しくて… でもしっかりしていたし頭も良かった。






運動も得意だったから

太一くんと3人でバレーをする事もあった








遊べるのは月に2回とかだったけど、



2人は私にとって毎日学校で頑張ろうと思える




自信であり 力であり 勇気だった










お絵かきをしたり 縄跳びをしたり 積み木をしたり




どんなに些細な事でも2人と過ごした時間は






楽しくて…幸せで…









ずっと続くと思っていた。










今思えば

宝物のようにキラキラしていて… 小さくて…




すぐに幻のように消えてしまう特別なものだった













"幸せ"












きっとそんな日々は長く続かない










これは多分私の宿命なんだろう。












だからかもね、











"人" も








"未来" も…











信じるなんて恐ろしい……















2人と過ごした時間はあっという間に幕を閉じた
















小学2年生冬、









大好きだった優しい父が…











私に夏楓ちゃんと太一くんを出逢わせてくれた父が













難病にかかり 短い命を告げられた───────















父が倒れた時に広がっていた、








あの頃の私がクレヨンで塗りつぶしたような




デタラメな蒼い空が… どうしても、、













どうしても 頭から離れなくて________



























         既読感覚で❤️よろです🙇🙇

プリ小説オーディオドラマ