ピッ
ピピーーーーーッ
誰の気持ちも乗せないで会場中に響く
"試合終了の合図"
鉛のようになった重くなったであろう大きな脚を
引きずりながら一列に並ぶみんな。
見ていられないくらいに苦しくて…
それなのに ────────────
きっとそう、 "矛盾" っていうのは
こういう時のための言葉なんじゃないかって
思うくらいだったんだ ───────────
~あなたside~
ピーーーーー
「「「「ありがとうございました!」」」」
澤村「整列!ありがとうございました!」
「「したーっ」」
鳴り響く大きな拍手。
嶋田「お疲れ!!」
私も何か言わないといけないと思ったけど
滝ノ上「いい試合だった!」
…何も出てこなくて、、
滝ノ上「────── 負けた時にさ "いい試合だったよ" って言われんのが嫌いだったよ」
本当に本当に…
滝ノ上「"でも負けたじゃん" ってさ」
何も出てこなくて。。
滝ノ上「けどいざ声掛ける側になった時
それ以外に妥当な言葉って分かんねぇもんだな」
みんなの目から 今すぐにでも溢れだしそうな
どうしようもなく しょっぱいであろう一粒が
私をギリギリと締め付けた
こんなに悔しいのは初めてで…
いや、憶えてないだけなのかもしれないけど…
それでもこんなに悔しいのは身に覚えがなくて、、
誰かの悔しさが まるで
自分のもののように感じた ───────
それなのにどうしてか…
本当にどうしてなのか…
涙の一粒も流れて来なくて、、
悔しさを自分の中から出したことがなかったから…
恐怖とかそういうのが混じっていない
純粋な "悔しさ"
そんな気持ちの出し方は知らなくて…
でも胸がぎゅぅって苦しくて、、
おかしいんだ…
「撤収!」
体育館から出ていくみんなのもとへ
早く行かないとと急いで横断幕を取ろうとすると
嶋田「俺も手伝うよ」
滝ノ上「俺も俺も~」
2人が手伝ってくれたから早く終わった
あなた「ほんとッッ 色々ありがとうございましたっ」
嶋田「いーや、気をつけて行けよ~」
あなた「はい、!!」
お礼を言って 私は走り出した
あなた「🏃 ハァ ハァハァ」
走っている間も悔しくてたまらなかった
胸に重くとどまっているそれは
走っても振り落とされるわけではなかったけど
でも解ってるんだよ、、
みんなの方が私なんかより何百倍も悔しい事は…。
それがどれくらいかは私には想像もつかないけど
だからこそ…
その気持ちを知りたいと思う自分もいて、、
あなた「最初…何て言おう、、」
色んな言葉が頭の中でぐるぐる回って
でも何もしっくり来なくて、、
あなた「🏃 ハァ 皆さん、、お疲れ様です…!」
だから ありきたりな言葉を投げ掛けるしか出来なかった
日向「あっ、、あなた…」
西谷「、応援、、ありがとな」
菅原「スゴい届いてたぞ~ っ、ありがとな!」
あなた「!!」
あまりに衝撃的で
目を見開いたまま中々閉じられなかった
悔しいはずなのに…
何もしてない私に…
なんでそんな……
あなた「、こちらこそッッ
素敵な試合見せてくれてっ、
本当にありがとうございましたッッ」
そう私が言うと
みんな目にいっぱいの涙を浮かべた
──────── 決して溢さないように…
ただ息を潜めて ──────────
菅原「何だよ~
それじゃまるであなたが
"何もやってない" みたいな言い方じゃんっ」
あなた「え、」
菅原「あなたの大きな応援のお陰で…
みんな頑張れたんだから、、」
そう言うスガさんの後ろから
ヒョコっと顔を出す主将も…
澤村「そうだな、本当にありがとな。」
田中「流石潔子さんに次ぐ
"烏野男子バレー部" のマネージャーだなッッ」
みんな口を揃えて急にそんな事を言いだすから……
あなた「ッ、」
ビックリして、、困っちゃって…
あなた「…ありがとうございますッッ、」
意味もよく分からずに そんなことを言っていた
そうか、
きっとここにある
"夢" も
"希望" も…
とんでもない
"苦しみ" も……
全部全部、、
この人達の中にあるんだ ─────────
??「🚶 」
小さな人の影が私達の近くに来て足を止めた
「「「「?????」」」」
誰だろう……???
あなた&影山「、っ!? な"ッ、」
何で忘れていたのだろう ─────────
昨日はあんなに心に重くのし掛かっていたのに……
あなた「なんで、、」
私だけじゃない、、
このままじゃダメだ…
なんで、、
なんでみんなまで巻き込むの…?
関係ないのに、、
今さっき負けたばっかの人達を、、
漬け込むの、??
こんなときに、、そんなの…
みんな苦しいはずなのに、、
────── そんなのあんまりじゃないか……!!
??「─────────」
みんなの疑問や固まった表情なんか
お構い無しにスラスラと話し出したその人
口を開ける直前、
いくつもの照明に照らされて
目の前のソイツは
微かに笑っている様に見えた ─────────
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!