第8話

惨めなわたし
ジンから次に連絡があったのは、夏のイベントが終わった頃だった。
あなたは25歳になった。ハタチで発症したのであと5年かと、あなたは自分の命の期限を思った。あと5年。それは、何かを始めるにはとても短くて、何かを終わらせてしまうにはとても長い、そんな残り時間だった。
ジンたちの店が休みの夜、美桜さんのオススメというバーに誘われた。
神宮寺勇太
神宮寺勇太
ごめんな、あなた。オープンしたてでまだ慣れないことが多くて忙しくて忙しくて。
あなた

わたしはいつでも平気だから。

神宮寺勇太
神宮寺勇太
あんなこと言っちゃったから、ずっと気になってただろ。美桜も俺もずっと気にしててさ。あなたが待ってるだろうから早くしなきゃって。
今田美桜
今田美桜
それでね、紹介したい人がいるんだけど、今あなたちゃんはフリーなんだよね?
あなた

ええ、まぁ…。

今田美桜
今田美桜
最後の彼氏と別れてどれくらい経つ?
あなた

えっと…ハタチの春かな。夏には病院だったし…。

今田美桜
今田美桜
なるほどね~。で、紹介したい人っていうのは、あたしの大学の後輩なんだけどね。安藤律っていう人なの。29歳で設計事務所に勤めててね、話してもすごく明るくていい人よ。あたしのワガママも全部聞いてくれたし。一度飲みに行こうよ。それか、ウチの店で会わない?
あなた

えっと…。

今田美桜
今田美桜
すっごいいい人なんだけどね、ちょっと心臓に障害があるんだ。
あなた

えっ、障害?

今田美桜
今田美桜
子供の頃から、心臓?…悪いみたいで。あんま運動とかはできないんだけどさ。でもあなたちゃんも体悪いんだよね?だからお互い気が合うかなって思ってさ。普通の女の子だと、ちょっと遠慮?…とかしちゃうかもしれないけど、すっごいいい後輩なの!仕事も真面目だし、性格も、体悪いのに全然卑屈じゃなくてね。そーゆー辛さを一緒に励まし合っていけると思うの。
神宮寺勇太
神宮寺勇太
ね、あなた。いいと思わない?安藤さん。
あなたはこみ上げる怒りを抑えるために足を組み、冷静を装った。
あなた

そうだね。でもわたし、今はあんまり考えられないかな。

神宮寺勇太
神宮寺勇太
でも…。
あなた

わかってるよ。

今田美桜
今田美桜
それは…自分が病気だから勇気が出ないってこと?
神宮寺勇太
神宮寺勇太
え?そうなの?あなた。
あなた

そうじゃないよ。ただそういう気分じゃないだけ。…ごめんね。でも、ありがとう。そういう気持ちになれたら、今度はわたしからお願いするよ。

あなたは、解散まで笑顔を保った。
それからあなたは、自宅に帰り、すぐにトイレに駆け込んだ。そして、胃の中の内容物を全て吐き出した。すると、涙の粒があなたの頬を伝い落ちた。やっと見つけた泣ける場所がトイレだなんてあんまりだと思うと、涙が止まらなかった。