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第1話

わたしが余命を知ったとき
青天の霹靂を、永瀬あなたは知っている。彼女のそれまでが晴天だったとは言えないが、大雨もなかった平凡で単調な人生に、それは突然に訪れた。
医師:余命は人によってそれぞれです。
   永瀬さんの状態からして、すぐにどう
   なるということはありません。 
   けれどこの病気は、いつ何が起きるか
   わからないんです。
急な入院からひと月後、病棟にある狭い一室で、そう告げられた。
両親の顔は蒼白になり、めったに泣かない兄の廉はハンカチで顔を覆う。医者は気まずそうにカルテに視線を落とす。当の本人だけが笑った。
あなた

知ってるよ。余命は10年。それ以上生きた人はいないんでしょ。

あなたはそう言って、院内のインターネットで調べた資料を見せた。個室の雰囲気は更に悪化した。だからあなたは更に笑った。
入院に合わせて買ったパジャマはまだ新品同様で、それを着ている彼女の肌も同じように若々しく、とても病人には見えなかった。
あなた

別にいいよ。オバサンになるのなんて嫌だし。丁度いいじゃん。わたしは大丈夫。あと10年で十分だよ。人生なんて。

そして、21歳の誕生日を朦朧とする意識の中迎えた。短大は中退、仲間たちはみんな社会に出て行った。けれど、あなたは繋がれたままだった。
寿命だけが足早に仲間たちを追い越していった。