すっかり陽も落ち、蛍光灯の冷たい光だけが教室内を照らす中、鳥羽警部は生徒用の椅子に座る圭介と亜美を前に手帳を開いて事件の概要を読み始めた。
亜美が驚きのあまり机に両手をつき、身を乗り出す。
鳥羽も意外そうな顔で亜美に視線をやる。
どうやら圭介は事件のことよりも水瀬という教諭に興味があるらしい。
鳥羽が呆れ顔でツッコミをいれる。
圭介は鳥羽の言葉を完全にスルーして、勝手に本題へと入った。
鳥羽は持っていた手帳を閉じて胸ポケットにしまった。
圭介は一気にやる気が失せたようで、頬杖をついて鳥羽を見上げた。
鳥羽は腕を組んで眉間に皺を寄せた。
圭介が握り拳を天に掲げ、勢いよく椅子から立ち上がる。
亜美は圭介の勢いに若干引きつつも、圭介の脇を肘でつついた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。