居てくれると思って七海頼りだった人、顔面蒼白。
その言葉は、あなたの心に深く刺さる。
都内某甘味処にて──
想定外すぎたその返答に、思わず変な声が出た。
しばらく沈黙のまま。
気まずさからあなたが口を開く。
頬杖をついて、ニマッと笑う九十九。
口を閉じ、眉を曲げるあなた。
九十九は和菓子に夢中で、あなたとは目も合わせずにそう言った。
ガッと勢いよく顔を上げる。
──この人、別に友達居なくても1人で話していられそう。
ひたすら頭に『?』を浮かばせるあなたを放置し、お菓子を頬張ってうっとりしている九十九。
九十九はバイクに跨ると、あなたにヘルメットを渡す。
あっという間に、高専入口前に着く。
あなたはバイクから降りて、ヘルメットを九十九に手渡す。
そう言われたあなたの笑顔からは、喜びの気持ちが滲み出ている。
そして噛み締めるように頷いた。
手を振るあなた。
不思議な九十九にあなたは拍子抜けである。
──行っちゃった。本当に最後まで何も無かった。
この間の京都校の2人といい、私、すっかり尋ね人だなぁ。
やっぱり''妹''ってネームバリューのおかげなんだろうけど。
探していたのだろうか。
パンダがこちらへ走ってくる。
パンダの元へ走る。
送別会には、いつもの3人が集まってくれていた。参加予定だった五条は任務で遅くなる、とのことで。
その晩は、明日から離れる寂しさを忘れて盛り上がり、そのまま全員、部屋で眠りについてしまうのだった。
あなたは未だ、荷造りが中途半端なことを忘れて──
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。