第52話

門出
5,239
2022/12/20 09:03
3月20日


海外留学 出立日



あなた




目が覚めると、そこには地獄絵図が広がっていた。




なんで皆で寝てんだ…?




昨日の記憶が無い。




え、嘘。私アルコール飲んだ?




いや、飲んでないはず




楽しすぎて記憶飛んだ?




五条先生も寝てるし…



あなた
五条先生にお酒飲ませたの誰…



ボソッと呟き、


携帯の電源をつけると




時刻は9時





思わず2度見をする。









1度携帯の電源を切り、


再度つけてみる。


※寝ぼけてる









もう1回見ても、


時刻は変わらず9時




あなた
え…?







やばい


やばいどころじゃなく


やばい





飛行機の出発時刻は


12時



伊地知さんが迎えに来てくれる時間が


10時



まだ、荷造りも半端なまま


お風呂も入ってなければ身支度もしていない









終わった









大遅刻だ

















10時









____20分過ぎ







あなた
すいません伊地知さぁん…
伊地知 潔高
い、いいえ
伊地知 潔高
遅れるって連絡は頂いてましたので…

ボサボサな頭のあなたの両手には大荷物。

それを伊地知と共に車のトランクに乗せて、

皆で車に乗る。




終わってない荷造りを高速で終わらせ、

最低限のことだけして、

なんとか約束の時刻に間に合わせた。




いや、間に合ってはない。



禪院 真希
まじでギリギリだったな
あなた
危なかった…



いや、間に合ってはない。



パンダ
荷造りくらい昨日のうちに終わらせておけよな〜
あなた
昨日色々あって忘れてたんだって…
禪院 真希
有り得ねえ
狗巻 棘
明太子…
パンダ
本当に忘れ物ねえのか?大丈夫か?
あなた
分かんないけど
あなた
とりあえず寮においてあったもの全部詰め込んだから大丈夫なはず…
五条 悟
ま、なんかあったらこっちから送ればいいでしょ
五条 悟
そん時は伊地知、よろしく
伊地知 潔高
えっ











空港到着

五条 悟
あ、憂太の連絡先教えてなかったよね
五条 悟
はい
あなた


五条が見せてきたQRコードを

自分の携帯で読み込む。

あなた
ありがとうございます
五条 悟
到着時刻に向こうの空港で待ってるみたいだから、
五条 悟
着いたら連絡してあげて
あなた
分かりました
禪院 真希
着いたらこっちにも連絡しろよ
あなた
もちろん











あなた
あっ!

突然の声に驚く全員。
禪院 真希
なんだよ
あなた
真希に貰ったお揃いのキーホルダー※第18話「休日」参照、部屋の机に置きっぱなしだ!
あなた
バッグに付け替えようと思って外したまま置いてきちゃった…
禪院 真希
んだよびっくりさせんなよ

胸を撫で下ろす真希。
あなた
ごめん真希…
禪院 真希
いいよ、気にすんな
あなた
でも…
禪院 真希
んじゃ、これ持ってけ

真希は持っていた自分のキーホルダーを外して、

あなたに渡す。
あなた
え、いいの?
禪院 真希
おう、私はあなたのやつ持っとくから
あなた
真希〜…
禪院 真希
絶対帰ってきて、それ私に返せよ。
禪院 真希
それまでお前のは、私が預かっといてやる。






''絶対生きて帰ってこい''





あなた
…うん
あなた
約束する。









出発時刻が近付く。
あなた
じゃあ、そろそろ行くね
あなた
皆、絶対また会おうね
パンダ
おう
禪院 真希
当たり前だ
狗巻 棘
しゃけ!
パンダ
向こうでも元気でな
あなた
うん、皆も元気で
五条 悟
憂太にもよろしく
あなた
はいっ
禪院 真希
じゃあな
パンダ
またな、頑張れよ
狗巻 棘
ツナマヨ!(行ってらっしゃい!)
五条 悟
楽しんでおいで!
あなた
うん!



あなた
じゃあ、行ってきます!















飛行機を降りて、空港のソファに座り、

憂太さんに


''到着しました''


と送ると、

すぐに返事が返ってくる。





荷物を持って、言われた出口から出る。









外は思っていた何倍も暑かった。


制服の上から羽織っていたカーディガンを

脱いで丁寧に畳む。


あなた
あっ



遠くの方に、

高専の制服を着た小柄な人と

サングラスをかけた黒人の大柄な人が

2人並んで立っている。




絶対あの人がミゲルさんだ。


デカい。


わかりやすい。

乙骨 憂太
あ、いた!おーい!


向こうも気がついたようで、

大きく手を振っている。


あなた
……よしっ





今日からこっちで、長い戦いが始まる。





絶対強くなって帰るんだ。





もう、二度とあんな思いはしないために。









大切な人を、守るために。














そう決意して、




1歩、




足を踏み出した。






















第1部 邂逅編 完

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