3月20日
海外留学 出立日
目が覚めると、そこには地獄絵図が広がっていた。
なんで皆で寝てんだ…?
昨日の記憶が無い。
え、嘘。私アルコール飲んだ?
いや、飲んでないはず
楽しすぎて記憶飛んだ?
五条先生も寝てるし…
ボソッと呟き、
携帯の電源をつけると
時刻は9時
思わず2度見をする。
1度携帯の電源を切り、
再度つけてみる。
※寝ぼけてる
もう1回見ても、
時刻は変わらず9時
やばい
やばいどころじゃなく
やばい
飛行機の出発時刻は
12時
伊地知さんが迎えに来てくれる時間が
10時
まだ、荷造りも半端なまま
お風呂も入ってなければ身支度もしていない
終わった
大遅刻だ
10時
____20分過ぎ
ボサボサな頭のあなたの両手には大荷物。
それを伊地知と共に車のトランクに乗せて、
皆で車に乗る。
終わってない荷造りを高速で終わらせ、
最低限のことだけして、
なんとか約束の時刻に間に合わせた。
いや、間に合ってはない。
いや、間に合ってはない。
空港到着
五条が見せてきたQRコードを
自分の携帯で読み込む。
突然の声に驚く全員。
胸を撫で下ろす真希。
真希は持っていた自分のキーホルダーを外して、
あなたに渡す。
''絶対生きて帰ってこい''
出発時刻が近付く。
飛行機を降りて、空港のソファに座り、
憂太さんに
''到着しました''
と送ると、
すぐに返事が返ってくる。
荷物を持って、言われた出口から出る。
外は思っていた何倍も暑かった。
制服の上から羽織っていたカーディガンを
脱いで丁寧に畳む。
遠くの方に、
高専の制服を着た小柄な人と
サングラスをかけた黒人の大柄な人が
2人並んで立っている。
絶対あの人がミゲルさんだ。
デカい。
わかりやすい。
向こうも気がついたようで、
大きく手を振っている。
今日からこっちで、長い戦いが始まる。
絶対強くなって帰るんだ。
もう、二度とあんな思いはしないために。
大切な人を、守るために。
そう決意して、
1歩、
足を踏み出した。
第1部 邂逅編 完
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。