第6話

植 物 図 鑑 ep.05
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2018/05/11 01:25
植物図鑑  - our story -  /  ep.05


_____ chapter 3 小ちゃなヤキモチ _____




翌日、さやかは買い物袋を

片手に家路についた。



商店街は早い時間に閉まってしまうので

さやかの平日の買い物は駅前のスーパーだ。



普段は割高なスーパーだが、

この時間には閉店間際の安売りセールに

当たることがあるので結構お得だ。



玄関をあけ夕飯の準備を一通り終えると、

テーブルの上に放り投げたままの

郵便物を仕分けする。



ダイレクトメールの宛名部分を千切り捨て、

中身を確認せずにそのまま

紙ゴミの山に放り込む。



そんな中、一つの封筒に

さやかの目がとまった。



可愛いピンクの花柄の封筒に

女性特有の繊細な字で宛名が書かれていた。



「日下部 樹様」



慌てて裏を返し、

差出人の名前を見てさやかは固まった。



「杏奈」



苗字などもはや目に入らなかった。



どこからどう見ても女性の名前に

動揺を押さえられない。



書かれた住所は樹の実家の近所のものだ。

… 誰?



さやかの知らない樹がいる気がした。

離れている間の事を二人で報告しあったけど、

全てを知る事はできない。



頭がひどく混乱する。

さやかはそのまま動くことができなかった。



i ‘ただいまー



部屋の明かりに浮かれながら、

樹は玄関を開いた。



i ‘さやか?



いつもなら、直ぐに飛んでくるはずの

妻の返事がない。



i ‘もしかして、寝ちゃった?



と、リビングを覗くと椅子に座ったままの

さやかの肩がびくんと揺れ、

慌てたように立ち上がった。



s “お、おかえり

i ‘ただいま。何かあった?

s “ううん。何も。あ、郵便届いてたよ、樹宛て



動揺しているの丸判りなんだけどな。

樹は訝しがりつつも、

さやかから封筒を受け取った。



封筒を裏返し、差出人の名をみて

樹の目が輝いた。



i ‘杏奈ちゃんかー!



嬉しそうに丁寧に封をあける姿をみて、

さやかはまた落ち込んだ。

随分と仲がいいんだ。



i ‘前に話さなかったっけ?俺が実家に帰っていたときに公園で仲良くなった子だよ。この間、図鑑贈ったからそのお礼だって



そういえば、そんな話をしたような気もする。



s “そう



ここの住所教えたんだ。



i ‘あ、太一君と仲直りしたんだー!よかった!



ん?ちょっと待て、太一君って誰だ?



i ‘さやか。変な顔してる



樹がさやかの様子にとうとう吹き出した。



i ‘俺、言ってなかったっけ?太一君は杏奈ちゃんの幼馴染でクラスメート。ついでに言うと二人とも小学2年生です



しょ、小学生 … しかも低学年に

ヤキモチ妬いていたのかあたしは!

どんだけ心狭いのよ!!



心の中でガックリと膝をついたさやかの頭を

樹がヨシヨシと撫でた。



s “だって、その字。どうみても大人の字だし

i ‘うん。宛名が上手くかけなくてお母さんに書いて貰ったって

s “公園の話は聞いてたけど、サクラちゃんの飼い主の子としか聞いてないと思う

i ‘え?ホントに?



必死に記憶をたどる樹の姿に、

さやかの顔がほころんだ。

なんだ、話して見たらなんて単純な事だろう。



すると、背中が急に重くなった。



i ‘なんか言うことは?



樹がさやかに覆いかぶさるように抱きつく。



s “うー。結婚したって言うのにヤキモチ妬いてました。ごめんなさい



その言葉に樹の腕に力がこもる。



s “ちょっ!苦しいよ!樹

i ‘だって、さやかが可愛いから

s “なんで?ヤキモチ妬いてたんだよ。樹のことを信じてないみたいじゃない

i ‘うん。ヤキモチ妬いてくれるくらい俺の事が好きって事でしょ?



樹の言葉にさやかの顔が一気に火照る。



i ‘さて、奥さんの誤解も解けたことだし … 夕飯は … ?

s “ああああーーーー!!!下ごしらえだけで忘れてたーーー!!!



頭を抱えたさやかを樹は軽々と抱き上げた。



i ‘じゃ、先にさやかから

s “い、いつき?

i ‘あんな可愛いとこ見せられるとね。ちょっと抑えがきかない

s “ふ、風呂入ってないしっ!

i ‘あとで二人で入ろっか

s “夕飯は!?

i ‘あと仕上げだけでしょ。俺がやるよ

s “こ、今度は絶対に腕振るうんだからね

i ‘うん。楽しみにしてるよ



そんな話をしながら、

二人は寝室へ消えていった。




fin. __________

✒︎ chloé



◎ この話で出て来る 杏奈ちゃん ・ 太一君は、映画では出てきませんが小説で出てくるキャラクターです。

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