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第2話

植 物 図 鑑 ep.01
植 物 図 鑑  - our story -  /  ep.01

____ chapter 1 無題 ____




『 ごめん、またいつか 。』

そんな簡単なメモを残して樹はいなくなった



何度も何度も枕を濡らし、

樹さえいてくれれば、

隣にいてくれればと願った数々の夜 。



でも、今は違う。



樹はとなりにいてくれている



不意に、樹の手が動き、さやかの髪をなでた。

今日は早起きだね、と息だけで囁く



i ( 樹 ) ‘いつもギリギリまで寝てるのに。

s ( さやか ) “なんか今日はお目覚めが良かった



起きたのなら遠慮することはない。

さやかは樹にぎゅうとくっついた。




s ”樹、今日会社の人に入籍の事報告するね、

さやかは抱きかかえられた腕の中から樹を見上げた



樹とさやかが入籍したのはつい先日の事だ



親への紹介なんてすっぽかし

樹が帰ってきた次の日、

「 一緒に生きていきたい 」と言われた次の日

二人で市役所へ行った



私は河野さやかから日下部さやかになった。



ごく一部の友達には話している。

みんな突然の事に驚いてはいるものの、

なんやかんやで祝福はしてくれている。



せめて形だけでも、と渡された結婚指輪は、

今も二人の指で輝いている。



いつもは指輪を外して会社へ行くのだが、

今日は、今日からは、付けていくつもりだ。



二人で指輪を眺めて、微笑み合う — 。



樹がいなくなりどん底にいた日々からは

想像もできなかった。



もし、昔の私と話されのなら、

樹は戻ってきてくれる。今は私の隣にいるよ、

って伝えてあげたい。



i ’本当に良かったの?こんなに急で

樹が心配そうに聞く。きっと結婚の事だろう

私は返事をする代わりに、

ちゅっと樹の頰に唇を落とした。



i ‘さやかからしてくれるなんて珍しいね、

そう言って樹の唇が軽く触れる。



おどけた樹が起き上がった。



s “どうしたの?

i ‘朝飯、俺が作るよ。

s “え、でも、今週私の当番 …

i ‘お礼。
さやかからしてくれる事なんて滅多にないから



言いつつ樹はあと5分の所で

目覚まし時計のアラームを切った。

本格的に起きだす姿勢だ。



やがて台所から、

卵を炒める音を BGM に

焦がしたバターの匂いがしてきた。




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✒︎ chloé