午前8時
小鳥たちが歌声を広めていく中
俺の一日はこの一言で始まる
なんて言ったらババアに殺されるから
心の中に秘める
カーテンから差し込む光で
まぶたが開いた
長い前髪が邪魔になってかきあげる
俺は橘 魁斗。
現在16歳で蒼生高校の2年生だが
不登校になっている
つまり「不良」だ
家庭的に自慢じゃないけど
俺ん家は相当の金持ちで
職を見つけるのは苦ではない為
両親は何も言わなかった
俺としては都合がいいけどな
1階に降りると
親父がコーヒーを飲んでいた
今日は仕事が休みらしい
ババアには反抗するけど
親父はキレると怖いから
何も言わない
学校に行かないと言った時
何も言わなかったのは感謝している
テレビで流れている殺人事件のニュースを見て
表情を暗くする親父
遠いところで起きているだけマシだ
テーブルに置いてあるコーヒーを1口啜ると
親父が俺をじっとみていた
親父が口角をあげた
一言で言えば気持ち悪い
背中に冷たい汗が流れる
キッチンを見るとババアも
こっちを見ていた
監視するかのように
なるほど、2人とも前から話をしてるな
嫌な予感がする
前もこういうことがあった
俺は観念し、大人しく親父の話を聞くことにした
ほら当たった。
親父の知り合いには店営業をしている人が多く
俺の話をする度に
会わせて欲しいと言われるらしい
親父は断りきれず
いつも俺が断っている
一体どんな、俺の話をすれば
こんなにバイトの勧誘が来るのだろうか
不思議でたまらない
正直にいえば
絶対に行きたくないと思う
行くならゲームしておきたいところだ
まだ、アクションゲームをクリアしてないんだ
そう思っているとババアが口を開いた
当然、俺の話は聞き入れられず
話はだんだん進んで行った
あぁ、分かってる
この夫婦の話のスピードは怪物級だ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!