目の前にはタオル一枚を腰に巻いた風助くん。
どうやらぼんやりしてたせいで、女湯と男湯を間違えてしまったらしい。
ばしゃりと勢いよく立ち上がってはっとする。
風助くんの視線は何もまとっていない私の身体を
まじまじと見つめている。
私は慌てて肩までお湯に浸った。
ブッと鼻血を吹き出した風助くんはしばらく頭を押さえて、まるで何かを思い出すかのように眉を寄せた。
バシャバシャとこちらに歩いてくる風助くんに、
スケベアー達が緊急スケベ注意報を発令する。
まるで修学旅行前のスケベな彼に戻ったみたい。
風助くんはお構いなしに私の隣に座った。
慌てて逃げようとすれば、がっしりと腕を捕まえられてしまう。
見かねたようにリセイウチが飛び出してきて私たちの間に立ちふさがる。
そう言うと風助くんはリセイウチを鷲掴みにして私の方に投げた。
どうやら風助くんは正気に戻ったらしい。
正気といってもスケベだから危険なんだけど……。
今までどこに隠れていたのか、風助くんの肩からひょっこり現れたのは真っピンクのスケベアー。
二匹に何があったのか……
リセイウチは少しだけ寂しそう。
と、そんなやり取りに気をとられていたら突然ガラリと引き戸が開いた。
当然隠れるヒマなんかなくてーー
呆然とこちらを見つめるのは、裸の遊佐くんだった。
すらりと伸びた脚。
腰には雑に巻かれたタオル。
危うく見惚れそうになりはっとする。
しばらく間が空いてぷっと吹き出したのは風助くん。
日頃の行いのせいだろうか。
なんだかすごくいたたまれない。
ばしゃっと遊佐くんもお湯に入ってきて、
風助くんをお湯の中へと沈める。
バチバチと二人の間に火花が散っているけど、
私はまっさきに逃げ出したかった。
これ以上他の男子に見つかったら生徒指導は当たり前、ただでさえさっきまで呼び出されていたのに。
でも、でも……遊佐くんの裸がそこに……!!
久しぶりのスケベとリセイの戦いに頭の中がぐるぐるする。
すると睨み合っていた遊佐くんが突然
私をかばうように背に隠した。
遊佐くんは腰に巻いていたタオルをとって、
私に後ろ手で渡した。
丸見えだ。
そうは言っても目の前には遊佐くんのあらわになった身体が広がっている。
きめ細やかな肌が少し火照って
その肌を滴る水がすごく色っぽい。
上から引き締まった背中、そして腰、そしてお湯の下にはお尻が……
バクバクと心臓が高鳴り、鼻血は全力待機中だ。
だけど誰かが露天の引き戸を開けた。
風助くんの間抜けな声とともに足音が近づいてくる。
この声、清井先生?!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!