第20話

ここって男湯?!彼の裸にのぼせる夜
3,616
2020/06/12 09:56

目の前にはタオル一枚を腰に巻いた風助くん。

どうやらぼんやりしてたせいで、女湯と男湯を間違えてしまったらしい。
心美
心美
嘘!ここ、男湯だったの?!
出なきゃ!

ばしゃりと勢いよく立ち上がってはっとする。

風助くんの視線は何もまとっていない私の身体を
まじまじと見つめている。
風助
風助
……
心美
心美
うわああ!!

私は慌てて肩までお湯に浸った。

ブッと鼻血を吹き出した風助くんはしばらく頭を押さえて、まるで何かを思い出すかのように眉を寄せた。
風助
風助
あれ…オレなんでこんな場所に?
スケベちゃん、何してるの?

バシャバシャとこちらに歩いてくる風助くんに、
スケベアー達が緊急スケベ注意報を発令する。
心美
心美
こ、こないで!!
今タオルもないし!
風助
風助
えー嫌だ
せっかくのラッキースケベなのに

まるで修学旅行前のスケベな彼に戻ったみたい。

風助くんはお構いなしに私の隣に座った。
慌てて逃げようとすれば、がっしりと腕を捕まえられてしまう。
リセイウチ
リセイウチ
おい風助のあんちゃん
しっかりせんか!
またスケベに逆戻りやないかい!

見かねたようにリセイウチが飛び出してきて私たちの間に立ちふさがる。
風助
風助
あー、絶対こいつのせいだわ
なんかやたら理性理性ってうるさくて
おまけにあの鬼教師も……
あんま記憶ないけどもしかしてオレ
変じゃなかった?
心美
心美
うん……
なんか様子が変だったかな

そう言うと風助くんはリセイウチを鷲掴みにして私の方に投げた。

風助
風助
スケベちゃんに返すね
オレいらねーし

どうやら風助くんは正気に戻ったらしい。
正気といってもスケベだから危険なんだけど……。

今までどこに隠れていたのか、風助くんの肩からひょっこり現れたのは真っピンクのスケベアー。
スケベアー
スケベアー
リセイがいなくなってせいせいするわ!
リセイウチ
リセイウチ
そんな言い方せんでも…
まぁ元気でな、ピンクの嬢ちゃん
スケベアー
スケベアー
ふんっ!

二匹に何があったのか……
リセイウチは少しだけ寂しそう。

と、そんなやり取りに気をとられていたら突然ガラリと引き戸が開いた。

当然隠れるヒマなんかなくてーー
遊佐
遊佐
は?!心美……?

呆然とこちらを見つめるのは、裸の遊佐くんだった。

すらりと伸びた脚。
腰には雑に巻かれたタオル。
危うく見惚れそうになりはっとする。
心美
心美
遊佐くん!
あの、これはその
浮気とかじゃなくて!
遊佐
遊佐
お前まさか、忍び込んだのか?
いくらスケベでもそれはやりすぎだろ
心美
心美
………え?


しばらく間が空いてぷっと吹き出したのは風助くん。
風助
風助
スケベちゃん
彼氏に疑われちゃってカーワイソー
心美
心美
ううっ…
忍び込んだわけじゃなくて
間違えちゃっただけだよ

日頃の行いのせいだろうか。
なんだかすごくいたたまれない。
遊佐
遊佐
ってかお前近えぞ、心美から離れろ!

ばしゃっと遊佐くんもお湯に入ってきて、
風助くんをお湯の中へと沈める。
風助
風助
ぷはっ!ひでー
いいじゃん別に減るもんじゃないし―
遊佐
遊佐
よくねえ
風助
風助
そんなに独占欲丸出しだと
スケベちゃんに愛想つかされちゃうよ?
遊佐
遊佐
心美の裸を見ていいのは
俺だけなんだよ
風助
風助
あっそ、
でもゴメンもう見ちゃったー
遊佐
遊佐
はぁ?!記憶から消せ!
いや、今すぐ俺が消してやる

バチバチと二人の間に火花が散っているけど、
私はまっさきに逃げ出したかった。

これ以上他の男子に見つかったら生徒指導は当たり前、ただでさえさっきまで呼び出されていたのに。



でも、でも……遊佐くんの裸がそこに……!!


リセイウチ
リセイウチ
嬢ちゃん
今のうちにこっそり風呂を上がるんや
スケベアー
スケベアー
だめだ!
遊佐の腹筋が見放題だぞ!
リセイウチ
リセイウチ
嬢ちゃん!
また誰か来たら一巻の終わりや!
スケベアー
スケベアー
遊佐のポロリだってあるかも!
心美
心美
ぽ、ぽろり……
久しぶりのスケベとリセイの戦いに頭の中がぐるぐるする。

すると睨み合っていた遊佐くんが突然
私をかばうように背に隠した。

遊佐
遊佐
……誰か来る!
心美
心美
え?!
遊佐
遊佐
とりあえずこれで身体隠せ

遊佐くんは腰に巻いていたタオルをとって、
私に後ろ手で渡した。

心美
心美
ゆ、ゆさくんのお尻がっ!!
丸見えだ。
遊佐
遊佐
しー…静かに!てかあんま見んなよ
どうせまた鼻血出すんだから

そうは言っても目の前には遊佐くんのあらわになった身体が広がっている。

きめ細やかな肌が少し火照って
その肌を滴る水がすごく色っぽい。
心美
心美
(見ないなんて無理だよっ!!
……もったいない!!)

上から引き締まった背中、そして腰、そしてお湯の下にはお尻が……

バクバクと心臓が高鳴り、鼻血は全力待機中だ。

だけど誰かが露天の引き戸を開けた。
風助
風助
げっ
風助くんの間抜けな声とともに足音が近づいてくる。



清井先生
清井先生
生徒の入浴時間は
もうとっくに終わったはずでは?

この声、清井先生?!



心美
心美
(ど、どどどどうしよう!!見つかったら今度こそ生徒指導だぁああ……!)

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