第24話

遊佐くんと抱きあって……
3,462
2020/08/07 11:46

ゆらゆらと揺れる遊佐くんの背中。
徐々に暗くなっていく山。

そしてまるで私達を迷わせるように
吹雪が強くなっていく。
心美
心美
ごめんね
私のせいで遊佐くんまで……
寒いよね?
遊佐
遊佐
お前がいるから寒くねえよ

吹雪が次第に強くなり
私達の視界は1メートル先も真っ白な状態。

どっちが旅館の方角なんてもうわからない。

私は遊佐くんを確かめるように
ぎゅっと彼を抱きしめた。
遊佐
遊佐
どうした?大丈夫だって

彼がこちらを振り向いて笑う。

心美
心美
もし遊佐くんが死んじゃったら
私、私……

じわりと滲んだ涙は冷たい風で凍りそう。

遊佐
遊佐
バカ
俺もお前が死んだら嫌なんだよ
てか何めそめそすんじゃねえ!
降ろすぞ
心美
心美
え?!私を置いていくの?
遊佐
遊佐
な訳ないだろ


ほら、と降ろされて気づいた。

目の前には小さな山小屋が建ってある。
遊佐
遊佐
ここでちょっと休憩すんぞ
旅館からそう遠くないと思うし
吹雪がおさまるまで、な?
心美
心美
うん、ここまで
運んでくれてありがとう
遊佐
遊佐
当たり前だろ

小屋の中は風が当たらない分
外よりは遥かに暖かい。

少し埃っぽいけど
ランプを付けると小さな暖炉があった。

私は急いで少し残っている薪に火をつけて
遊佐くんを前に座らせる。
心美
心美
寒くない?
遊佐
遊佐
寒いから来て

甘えたような声でぐっと腕を引かれ
彼に後ろから抱きしめられた。

じんわりと暖かい炎と
遊佐くんの体温でぽかぽかと夢心地だ。
遊佐
遊佐
指先、氷みたい

そっと彼が後ろから手を包み込む。
心美
心美
遊佐くんだって冷たいよ
遊佐
遊佐
お前よりましだろ
心美
心美
ごめんね
私のせいでこんなことになって
もっとしっかりしてたら
遊佐くんを危険な目に
あわせることなんてなかったのに
遊佐
遊佐
何回も謝るな
お前を見つける前に
クラスの女子から色々聞いたんだ
心美
心美
え?
遊佐
遊佐
お前といたあいつら、
俺らがこそこそしてんのが
気に食わなかったんだってさ
心美
心美
だよね
私、きっと遊佐くんと
旅行にこれて浮かれちゃってたんだ
遊佐
遊佐
でもしていいことと
悪いことがあんだろ

振り返ると、遊佐くんは悔しそうに
唇を噛み締めていた。
心美
心美
遊佐くん…
遊佐
遊佐
俺が助けに来なかったら
お前今頃死んでたんだぞ
俺は許せねえ
心美
心美
許すも何もほら!
私は今元気なんだし
遊佐
遊佐
もしお前が死んでたら俺は……

遊佐くんの声が震えている。
私は身体ごと向きを変えて彼をそっとだきしめた。

心美
心美
聞こえる?心臓の音
私は生きてるから
遊佐
遊佐
……

しばらく私たちは抱き合って
お互いのぬくもりに目を閉じた。

何も言わずそっと背中に手を回す彼が
なんだか可愛くて……。
遊佐
遊佐
ふっはは
お前の鼓動速くなってるぞ
心美
心美
だって遊佐くんが可愛いから
遊佐
遊佐
は?

ドサ……


なんだか不機嫌な声色になったと思ったら
そのまま押し倒されてしまった。
遊佐
遊佐
俺が可愛いって?
心美
心美
ひゃ!つめたっ

冷えた彼の指先が服の中に滑り込む。

怒ってるみたいだし、とにかく否定しないと!
心美
心美
可愛くない!
す、すごくスケベです!
遊佐
遊佐
なんだそれ
ほら早く服脱げよ
心美
心美
ええ!?寒いよっ
(も、もしかしてこのまま大人の階段
駆け上がっちゃうの?!)

スキーウェアのジッパーを降ろされたかと思うと
彼はそのまま耳元でささやく。
遊佐
遊佐
こういうときはさ
裸で温め合うもんじゃねえの?

かすれた声にドクンと心臓が高鳴り
スケベアーたちが……


騒ぎ出さない。
心美
心美
(スケベアー?!あれ?今すごくスケベなのに!いつもなら止めに来るリセイウチも来ない……)

何度心の中で呼んでも全く出てくる気配がしない。

遊佐
遊佐
どうかした?

私が固まったのを見て
遊佐くんが不思議そうに首を傾ける。
心美
心美
なんでもないです!
遊佐
遊佐
ふーん?

いじわるそうに笑う遊佐くんは
そのまま自分のスキーウェアを脱いだ。
心美
心美
ま、待って!
まだ心の準備がっ
遊佐
遊佐
待たない

彼の首筋、吐息、挑発するような眼差し
全てが色っぽくて……。

ゆっくりとした所作で服を一枚一枚脱いでいく彼。

彼から目をそらせない。

心美
心美
鼻血、でそう
遊佐
遊佐
出せば?

たらりと鼻血が溢れ出したのを見た彼は
押し倒した私の唇にキスをする。

遊佐
遊佐
血の味がするんだけど

ぺろりと舌を出した彼はもうすごくスケベで……


ちゅ


     ちゅ

  ちゅ



とめどなく降ってくる唇の熱に頭がくらくらする。
心美
心美
もぅ、我慢できないっ!
遊佐
遊佐
うわっ!

形勢逆転。

気がつけば彼を押し倒していた。

心美
心美
私もキスしていい?
遊佐
遊佐
いいに決まってんだろ?
心美
心美
触ってもいいの?
こことか、こことか、ここに
遊佐
遊佐
くすぐったいな
ったく、もうお前の好きにしろ



ぶわあっと胸の奥から愛しさが込み上げてきて
理性の糸がぷつんと切れる音がした。




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