ゆらゆらと揺れる遊佐くんの背中。
徐々に暗くなっていく山。
そしてまるで私達を迷わせるように
吹雪が強くなっていく。
吹雪が次第に強くなり
私達の視界は1メートル先も真っ白な状態。
どっちが旅館の方角なんてもうわからない。
私は遊佐くんを確かめるように
ぎゅっと彼を抱きしめた。
彼がこちらを振り向いて笑う。
じわりと滲んだ涙は冷たい風で凍りそう。
ほら、と降ろされて気づいた。
目の前には小さな山小屋が建ってある。
小屋の中は風が当たらない分
外よりは遥かに暖かい。
少し埃っぽいけど
ランプを付けると小さな暖炉があった。
私は急いで少し残っている薪に火をつけて
遊佐くんを前に座らせる。
甘えたような声でぐっと腕を引かれ
彼に後ろから抱きしめられた。
じんわりと暖かい炎と
遊佐くんの体温でぽかぽかと夢心地だ。
そっと彼が後ろから手を包み込む。
振り返ると、遊佐くんは悔しそうに
唇を噛み締めていた。
遊佐くんの声が震えている。
私は身体ごと向きを変えて彼をそっとだきしめた。
しばらく私たちは抱き合って
お互いのぬくもりに目を閉じた。
何も言わずそっと背中に手を回す彼が
なんだか可愛くて……。
ドサ……
なんだか不機嫌な声色になったと思ったら
そのまま押し倒されてしまった。
冷えた彼の指先が服の中に滑り込む。
怒ってるみたいだし、とにかく否定しないと!
スキーウェアのジッパーを降ろされたかと思うと
彼はそのまま耳元でささやく。
かすれた声にドクンと心臓が高鳴り
スケベアーたちが……
騒ぎ出さない。
何度心の中で呼んでも全く出てくる気配がしない。
私が固まったのを見て
遊佐くんが不思議そうに首を傾ける。
いじわるそうに笑う遊佐くんは
そのまま自分のスキーウェアを脱いだ。
彼の首筋、吐息、挑発するような眼差し
全てが色っぽくて……。
ゆっくりとした所作で服を一枚一枚脱いでいく彼。
彼から目をそらせない。
たらりと鼻血が溢れ出したのを見た彼は
押し倒した私の唇にキスをする。
ぺろりと舌を出した彼はもうすごくスケベで……
ちゅ
ちゅ
ちゅ
とめどなく降ってくる唇の熱に頭がくらくらする。
形勢逆転。
気がつけば彼を押し倒していた。
ぶわあっと胸の奥から愛しさが込み上げてきて
理性の糸がぷつんと切れる音がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。