第14話

潔癖教師を襲っちゃいました
自分から鼻血を出すなんてやったことないのに…! 
バカバカ、私のバカ!!

でも今更もう引き下がれない。
清井先生
清井先生
では遊佐くん、君には一度
退室してもらいます。
ドアの外で待っていて下さい
心美
心美
え?!
遊佐
遊佐
なんでだよ!
清井先生
清井先生
助平さんは先程、君の身体に興奮すると公言したばかりです。
君が居れば正確な判断ができません
心美
心美
う……そ、そんな
心美
心美
(遊佐くんをじっくり観察して思い切り鼻血を出そうと思ってたのに!)

スケベアー達は清井先生に向かってブーイングの嵐。

見えていないことをいいことに、先生の目の前で思い切りあっかんべーをしている。
清井先生
清井先生
この雑誌もひとまず隠しましょう
そうしなければフェアではありません
清井先生
清井先生
何もない教室で鼻血が出せたなら
助平さんはそういう体質なんでしょう。
遊佐くんへの謝罪、そして修学旅行への参加も認めます

渋々退室する遊佐くんは、小さく私に耳打ちした。

遊佐
遊佐
心美、いざとなったら音を聞け
心美
心美
え?


なんのことか分からなかったけど
彼のおかげでなぜだか少し肩の力が抜けた。


清井先生
清井先生
さて、ではいつでもどうぞ
と言ってもすぐに出せなければ
意味がありません
私が待てるのは5分だけです

スケベの「ス」の字もない殺風景な教室は、
しん……と静まり返って空気が張り詰めている。
心美
心美
(えーっと、そうだ遊佐くんのホクロ!場所を思い出して妄想しよう!確か、目尻に一つ……あれは国宝級にスケベ!!それに首筋、鎖骨、おへその下に…)


と妄想を膨らませるもののーー




・・・
心美
心美
(ダメだ……!!もう3分も経つのに
鼻血が出る気配すらしないよ!!)


どうしちゃったの私の鼻……。

生身なまみの遊佐くんが刺激的すぎて、
もしかして鼻がそれに慣れちゃったとか?
清井先生
清井先生
あと少しですね
そろそろ諦めてはどうですか?

ぴっちりとシャツのボタンを上までとめている先生はスケベとは正反対。

焦るばかりで妄想もままならない。




と、その時ーー

ドアの外からコホンと彼の咳払いが聞こえた。
心美
心美
(そういえば音を聞けって……)

よくよく耳を澄ますと、布が擦れる音とカチャカチャとかすかな金属音。

あれってもしかして、ベルトを外す音じゃ……!?

その後ジジ―…っとジッパーが下ろされる音も、、
心美
心美
(ゆ、ゆゆゆ遊佐くんドアの外で何してるの?! ま、まさか!!)
遊佐
遊佐
……ん、はぁ、はぁ、

かすかに聞こえた吐息にカッと顔が熱くなる。

吐息は収まることなく大きくなっていく。
それにつれ、私の鼓動もバクバクと苦しいほどに速まっていく。

スケベアー
スケベアー
ひとりでヤッてるぞ!
スケベアー
スケベアー
そうだ!あれはスケベな自家発電だ!!

妄想爆発のスケベアーたちは興奮気味でドンドコ太鼓を叩きはじめた。

そして「シコシコ」と何かをこする音……。

そのせいで私の頭は完全にショートした。

心美
心美
ス、スケベすぎ……
清井先生
清井先生
残念。鼻血、出ましたね
ここは認めたくありませんが、
私の負けでしょう
って……あれ、どうしました?
心美
心美
はぁ、はぁ、はぁ、遊佐くん……
(あ、あれ?目の前に遊佐くんがいる)
清井先生
清井先生
はい? 大丈夫ですか?

なぜだか頭がぼーっとする。

ぼやけた視界の先には
きっちりとシャツを着込んだ遊佐くんが座っている。
心美
心美
ゆ、遊佐くん……それ、
シャツのボタン、苦しくない?

目の前の邪魔な机の上に乗り出して、遊佐くんの襟元に手をかける。
清井先生
清井先生
す、助平さん? わ、わかりましたから
遊佐くんには謝罪します!
なのでこれ以上は近づかないで下さい
心美
心美
脱がしてあげるね、遊佐くん

上まで留められたボタンをひとつずつ外していく。


清井先生
清井先生
しょ、正気に戻って下さい!!

なぜか真っ青な顔でガタガタと怯える遊佐くん。

心美
心美
可愛い……
清井先生
清井先生
ひぃい!! 
怖い怖い怖い……
これだから女は嫌いなんだ
来るな! ケ、ケダモノォオオ!!


ガッタ―――ン!!



椅子ごと遊佐くんを押し倒したかと思いきや、
目の前には泡を吹いて気絶している清井先生がいた。
心美
心美
あ、あれ? 私、何して……
先生、大丈夫ですか?!
遊佐
遊佐
心美!?

慌てて教室に入ってきた遊佐くんは、
目の前の惨状さんじょうを見て、なにかを察したようだ。
遊佐
遊佐
ケダモノって聞こえたけど
どうせお前のことだろ
心美
心美
え?










あれから清井先生は3日間学校を休んだ。

不思議なことにその後はおとがめ無し、
それに先生は私を避けているみたい。
遊佐
遊佐
お前、先生に何したんだよ
心美
心美
だから本当に覚えてなくて!
そんなことより遊佐くんこそ
…ド、ドアの向こうで何してたの?
遊佐
遊佐
あー……あれか
なんなら今ここでやってやろうか?

そう言って彼は自分のベルトに手をかける。

心美
心美
え!? こ、こんな場所じゃだめ!!
みんなも見てるし!
遊佐
遊佐
なに想像してんだこのスケベ
俺、ただ筋トレしてただけだぞ?
心美
心美
え、筋トレ?! 
じゃあ、あの吐息って……
遊佐
遊佐
スケベなことは
修学旅行までお預けな?


修学旅行まであと2週間。

どうやら無事に行けそうです!