スケベな転校生による集団鼻血事件の翌日。
私は大好きな遊佐くんからのプロポーズに浮かれまくっていた。
校門前、女子に囲まれる彼を見るまでは…
遊佐くんにベタベタと触れる女子の手、手、手!
ふと一人の女子が彼のお尻に触れた瞬間、
頭の中で何かがブチッと切れた。
女子の中をかき分け、彼の手を引き走った。
誰からも追いつかれないように…
勢い余って彼を連れ込んだのは、薄暗い資料室。
カーテンから差し込む朝日に、埃がキラキラと舞う。
壁ドンで彼を追い詰めて、悔しいほど整った顔をじっと見上げた。
目の前にはきめ細やかな肌と、色気のにじむ首筋。
そして男の人特有の喉仏が私の視線を誘う。
試すような笑顔にドクリと心臓が跳ねた。
私のスケベの化身、スケベアーたちも
わらわらと顔を出し私の周りで騒ぎ出す。
恥ずかしくなってうつむいたその時、
スケベアーたちが一斉に叫んだ。
ばさ
ばさ
ばさ
ばさ
降ってきたのは大量の資料の雨。
私を庇って覆いかぶさる遊佐くんは、腰を押さえて痛そうに顔を歪める。
まさかの床ドン体勢に
ドキドキと心臓だけが速くなっていく。
とっさに手を伸ばし確認すると、
ちょうど真っ二つに割れていてーー。
心臓はバクバクと全身を揺らす。
そして鼻の奥で鼻血が今か今かとスタンバっている。
偽ることをやめた遊佐くんは、何かが吹っ切れたのか…色気倍増だ。
耳元で響いた低音に、びくりと肩が跳ねる。
頬をつねられたと同時にどばぁっと鼻血があふれる。
色気だけじゃなく、
ドS度も明らかに増してるみたい。
ふいっと目をそらした彼は私の上から退いて、床の資料をかき集める。
赤く染まった首筋のせいで、私まで顔が熱くなった。
ホームルーム中も、遊佐くんの声が脳内でリプレイされている。
そしてめくるめく放課後に思いを馳せていた。
先生の話も聞こえないほどに。
目の前にはギラついた瞳と、赤髪ピアス。
そう、この男はわざわざ転校までして私を追ってきた危険なスケベ男。
どうやら彼にもスケベアーたちが見えるみたい。
もう彼の虜になったクラスの女子達は阿鼻叫喚だ。
こっそりと耳打ちしてくれるのは理性の化身、リセイウチ。
スケベアーと同じく私の大切な化身だ。
あろうことか、彼はリセイウチをむぎゅっと掴んだ。
お互いに見えることは置いといて、
まさか触れるなんてーーー
びっくりしすぎて言葉がでない。
彼はいたずらっぽくニカッと笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。