第18話

ノーパンと女子たちの陰謀
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2020/05/15 11:29
心美
心美
(私のパンツ、盗まれちゃった?!)

更衣室の端でコソコソと話す隣のクラスの女子たち。
こちらを馬鹿にしたような笑い声が聞こえてきた。
心美
心美
(これって、嫌がらせだよね。でも証拠がないから責められないし…)
紗季
紗季
ちょっと心美どうしたの?
早くしなきゃ時間無くなっちゃうよ
心美
心美
え?! あ、うん

さっちょんにせかされて私は急いで浴衣を羽織った。

パンツを履いてないせいで
なんだか下半身がスースーして心許こころもとない。
心美
心美
(ま、まあ…ノーパンなんて
 誰にもバレないよね?!)

私は小さな不安を胸に、さっちょんに引っ張られながらも脱衣所を後にした。

女子たちの企みにも気づかずに……。





さっちょんとの作戦はまず
清井先生の部屋の場所を把握すること。

教員の部屋は東西の階段から一番近い場所にある。
その中の一つが清井先生の部屋だ。

紗季
紗季
心美は西の階段をお願いね


さっちゃんの指示のもと、私は忍者の如く偵察する。


こっそりと階段の影から様子を見ていると
トンと肩を叩かれて声なき悲鳴をあげた。
遊佐
遊佐
コソコソなにしてんだよ
心美
心美
ゆ、遊佐くん!?
びっくりしたぁ〜……
バクバクと跳ねる心臓を深呼吸でおさめようとしたけど、彼の姿に思わず息が止まった。
「水もしたたるいい男」

とは遊佐くんのために作られた言葉かもしれない。

しっとりと濡れた髪、汗ばんだ首筋。
まだ乾いてない髪から水滴が流れ
浴衣から覗く胸元につつーと滑り落ちていく。
心美
心美
(ああ…生まれ変わったら遊佐くんの肌を滑り落ちる水滴になりたい)

そんな心の中を見透かしてか、遊佐くんはふっと笑顔を浮かべた。

遊佐
遊佐
あんま見んなよ、変態スケベ
心美
心美
うっ

ドSに微笑む遊佐くんは浴衣効果も相まって
更に極上の色気をまとう。

鼻奥がいやと言うほど反応して、スケベアーたちは私の周りでビービーと久しぶりの鼻血警報を発令中だ。
心美
心美
浴衣はズルい…
遊佐
遊佐
え、何? 聞こえなかった

ぐっと近づかれたせいで、
ふわりとお風呂上がりの彼の匂いに包まれた。

タラリ…
心美
心美
あ……
遊佐
遊佐
お前いつも鼻血出してんな
また貧血で倒れても知らねーぞ

そう言いつつ、私の腰に手を回した遊佐くんはぐっと身体を引き寄せた。
心美
心美
だ、大丈夫!
それより浴衣に
鼻血ついちゃうから離して!
遊佐
遊佐
は? 嫌だ
またぐっと引き寄せられて目の前には彼の胸板。
心美
心美
(む、むむ胸板がっ!)

スケベアーたちがドンドコと太鼓を叩きながら踊り狂っている。

遊佐
遊佐
あれ……心美
もしかしてパンツ履いてねーの?
心美
心美
ひぇっ!!!

腰元にあった遊佐くんの手が私のお尻を撫でる。
心美
心美
(う、嘘!バレた!なんで?)

予想外の出来事に顔がボッと熱くなる。

恥ずかしすぎて、思わず彼を押して後ずさった。

遊佐
遊佐
心美?
心美
心美
あの、これはその……えっと
女子に盗まれたなんて言えない。
証拠だってないし……。

心美
心美
ご、ごめん!!履くの忘れてた―!!
遊佐
遊佐
はぁ?!嘘だろ?!
って、おい!!


ぐるぐると考えがまとまらない内に、私は遊佐くんから逃げ出してしまった。








心美
心美
うわーんっ、さっちょーーん!!
紗季
紗季
って、わあ!!どうしたのよ心美

私は相部屋に戻ってきたさっちょんに抱きついた。

そしてこれまでのパンツ盗まれ騒動と、遊佐くんから逃げてきたことを話す。

紗季
紗季
……そっか、なるほどねー
で、パンツの予備はあるの?
心美
心美
それはあるんだけど…
私もうどうしたらいいのか
分からなくて
紗季
紗季
心美が遊佐の彼女だってウワサ
結構広まってるみたいよ
仕方ないんじゃない?
遊佐、今はもう超人気だし
心美
心美
そうだよね
女子に人気なのは知ってたけど……
そっかぁ~…やっぱりモテモテだよね

現実を突きつけられた気がして
ぼふっと枕に顔を埋める。
紗季
紗季
堂々としなさい!
あんたがウジウジしたところで
現状は何も変わらないし
それにそのモテモテの遊佐が
あんたを選んだんでしょ!
心美
心美
さっちょん……

やっぱり私の親友はイケメン女子だ。
この男前な性格に何度助けられたことか……。

紗季
紗季
今日のところは作戦中断にしよっか
また明日に延期ってことで!
あ、清井先生の部屋は把握済みよ!

さっちょんは、ぱちんとウインクした。








修学旅行、2日目の朝。
生徒たちは大広間で朝食を楽しんでいる。

私はというと………
なぜか清井先生呼び出しを食らっていた。



騒がしい広間から離れた廊下で、清井先生は冷え切った目で私を睨む。



あまりに急な出来事に頭の中は大混乱。
心美
心美
(え……ま、まさか私達の作戦がバレた?!どどどどうしよう?!!!)

冷や汗を流しつつ先生を見上げると
すっと透明なビニール袋を差し出された。


それはまぎれもなく、私の勝負パンツでーー
心美
心美
え?! 私のパンツ!!
清井先生
清井先生
昨夜、これが私の部屋に
置いてあったのですが
なんの嫌がらせですか?
心美
心美
嘘……どうして
清井先生
清井先生
どうしたもこうしたも
あなたのシワザでしょう?
メモまで丁寧に用意して
 
ひらりと掲げられたのは小さなメモ。

「プレゼントです♡ 助平心美」と書かれてある。
心美
心美
違います!
私、やってません!!
清井先生
清井先生
そうですか。言い訳は今夜
私の部屋で聞かせてもらいます
心美
心美
そんな!
清井先生
清井先生
せっかくの修学旅行ですから
考慮はしてあげましょう
夕方までのスキー体験は
どうぞ楽しんで下さい


呆然と立ち尽くす私の横を
女子たちがくすくすと笑いながら通り過ぎて行った。




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