見つかったら今度こそ生徒指導なのに……。
遊佐くんを隔てた向こうには清井先生がいる。
バクバクと心臓が脈打ち、汗が額を伝う。
風助くん、ナイス!!
彼は私に軽くウインクした。
2人の足音が遠ざかっていき、
ほっと息をつくと目の前がぐるりと回転する。
気がつくと遊佐くんが私を抱き上げていて、
慌ててタオルで肌を隠す。
すたすたと彼は一直線に脱衣所へ向かった。
私は床に降ろされると、何枚ものバスタオルを強引に頭から巻きつけられて何も見えなくなった。
するとそのまま彼が私を抱きしめた。
じんわりと暖かい熱がタオル越しに伝わってくる。
スケベアーたちが反応する前に、彼の熱はすっと離れていった。
むすっとした声色。
私がタオルから頭を出せば、遊佐くんはもうすでに浴衣を着ていた。
彼は不機嫌な顔のまま脱衣所から出ていった。
もやもやした気持ちのまま、身体を拭いて浴衣を着る。
そしてこっそりと男湯の暖簾をくぐれば、そこにはまだ遊佐くんが立っていた。
久しぶりの低い声にぞくっとした。
口をついて出てしまった言葉に、彼が大きなため息をついた。
私の手を優しく握った彼は一歩先を歩く。
彼の手のぬくもりで不思議と不安はしぼんでいく。
連れてこられたのは遊佐くんと光くんの部屋だ。
薄暗い畳の部屋には布団が離れた位置に敷いてあって奥の布団では光くんが寝息をたてている。
布団に座った遊佐くんがぽんぽんと隣をたたいた。
唇に長い人差し指を当てられ、私は口を閉じた。
ぽんと彼の手が頭に乗る。
背に彼の腕が回ってぎゅっと抱きしめる。
すごく色っぽい声で囁かれ鼓動が速まっていく。
私の周りではスケベアーたちが赤飯の準備をしようとするが、それをリセイウチが止めに入っている。
突然近づく彼の唇に、ぎゅっと目を閉じる。
・ ・ ・
ドS な笑顔が目の前にあって、顔が熱くなる。
そして不意打ちで頬に熱い唇がかすめたと思うと、
彼は私を腕の中から解放した。
あれよあれよという間に私は廊下に閉め出された。
部屋の中に語りかけると、引き戸越しに絞り出すような声が返ってきた。
切羽詰まったその声に、鼻血がたらりと溢れ出した。
私はドSな彼にまたおあずけをくらった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!