第13話

密室で尋問?!鬼の生徒指導
まるで刑事ドラマでよく見る取調室とりしらべしつのよう。

椅子と机、そして資料棚しかない殺風景さっぷうけいな生徒指導室に私と遊佐くんは招かれた。

遊佐くんは私にだけわかるように目配せをする。
遊佐
遊佐
(俺にまかせろ)

彼の口パクに、小さくうなずいた。

清井先生
清井先生
さぁ、生徒指導の時間です

しん、と静まり返った室内で先生は静かに
入り口のドアに鍵をかける。

私たちを逃がさない気だ。
清井先生
清井先生
本題ですが
先程は屋上で何をしていたのですか?

なぜか楽しそうに口角を上げる清井先生。

この先生……わざとだ!
知ってて言わせようとするなんて……。

遊佐
遊佐
2人で弁当を食べてただけですよ
清井先生
清井先生
それは奇妙ですね
君たちはいつもあんな風に
まるで口と口がぶつかる距離で
弁当を食べるのですか?
遊佐
遊佐
いえ、あのときは
目にゴミが入ったので
取ってもらおうとしただけです
心美
心美
(遊佐くんナイス…!)

機転の利いた返しに心の中でガッツポーズをする。

私の周りでソワソワしていたスケベアーたちも、
遊佐いいぞ!と声を上げている。
清井先生
清井先生
はぁ……そうですか
ならどうして助平すけひらさんは
鼻血を流していたのですか?
心美
心美
……っ!

不意をつかれて思わず鼻を隠してしまう。
遊佐
遊佐
それは、
清井先生
清井先生
君は黙ってください
私は彼女に質問しているんです

まるで人食い鬼に追い詰められた時のような
じめじめとした冷や汗が背中を伝う。
心美
心美
その…鼻血は、体質なんです
清井先生
清井先生
体質?
心美
心美
あの…ええっと
つい鼻血が出ちゃう体質で!
いつも気がついたら出てて…
心美
心美
決してスケベだからとか
遊佐くんの身体に興奮したから
とかではないんです!!

思い切り叫んでしまって、はっとする。


遊佐くんはなぜか呆れ顔でため息を吐いた。

心なしか清井先生もあわれみの目だ。
清井先生
清井先生
それは自分がスケベだと言っている
ようなものですよ
心美
心美
ち、ちち違います!!
清井先生
清井先生
まぁいいでしょう…
なら今ここで鼻血を出してみて下さい
そういう体質ならできますよね?
心美
心美
そ、そんな!
清井先生
清井先生
出来ないなら
君たちは不純異性交友を
していたということでは……?
まぁ今更言い訳しても遅いですが

そう言って、清井先生は一枚の紙を取り出した。

紙には「修学旅行不参加の同意書」と書かれている。
遊佐
遊佐
これって…
清井先生
清井先生
君たちのような生徒は
修学旅行に行く資格はありません
ここにサインして下さい
遊佐
遊佐
勝手にこんなこと決めていいのかよ!
清井先生
清井先生
勝手? 私は教師です
保護者からあなた達の命を
預かっている身です
清井先生
清井先生
修学旅行で危険な行動をして
もしものことがあれば
責任をとるのは私たち教師です
心美
心美
で、でも!
清井先生
清井先生
ましてや隠れてコソコソと
ふしだらな行為をする生徒は
最も危険です…連れていけません

正論ばかり並べられ、ぐぅの音も出ない……。

スケベアー達は私の周りでプンスカ怒り狂っている。
清井先生
清井先生
確か遊佐くん、君は…
下着雑誌のモデルをやっているとか…
女子生徒がこんなものを持ってました

まるで汚物おぶつでもつまむように先生が雑誌を机の上に置いた。

それは昨日発売されたばかりの今月号。

まだ買えていない遊佐くん、いやモデルのritoリトが表紙を飾るメンズ下着雑誌!!

じゅるりとよだれが出そうになって慌てて唇を噛む。
遊佐
遊佐
それが何か?
清井先生
清井先生
こんな汚い仕事
すぐにやめなさい
遊佐
遊佐
は?!
心美
心美
き、きたない…!?
清井先生
清井先生
こんな破廉恥ハレンチ
裸同然の写真、全国にさらして
恥ずかしくないのですか
清井先生
清井先生
君はまだ高校生です
恥さらしとして世間に知れ渡ったら
痛い目をみるのは君で…
遊佐
遊佐
黙って聞いてればっ!
心美
心美
先生今の言葉、撤回てっかいして下さい!!!


怒りでプッツーーンと何かが切れた。

ガタリと席を立ち、目の前の先生を睨みつける。

遊佐
遊佐
心美…?
心美
心美
遊佐くんの仕事を
馬鹿にしないで下さい!!
この写真一枚に
救われる人だっているんです!
心美
心美
何が汚い仕事ですか!!
それは先生の偏見です!
遊佐くんに謝って下さいっ!
清井先生
清井先生
………

清井先生はぽかんと口を開けて固まっている。

こうなったらもう引き下がれない。
それに許せない…!
心美
心美
分かりました
……鼻血、出せばいいんですね?
遊佐
遊佐
は?!
お前、何バカなこと言って…
心美
心美
私が今ここで
鼻血を出すことができたら
今まで言ったこと、
全部撤回して謝ってください!
清井先生
清井先生
……いいでしょう
清井先生
清井先生
その代わり、出せなかったら…
分かっていますね?


先生は例の同意書をひらりと差し出してくる。



どうやら私は
とんでもないけに出てしまったらしい……。