雪山の冷えた空気が鼻先をツンと冷やす。
スキーウェアに身を包んだ私は、憂鬱な気分で真っ青な空を見上げた。
そう決意した矢先……
あからさまな嫌悪の視線に気づく。
不運にも私の選んだ初心者コースの班には
あのいじわる女子達がいた。
後悔も虚しく私は女子たちに避けられてしまう。
板の扱い方を学んでいる間も、インストラクターさんと滑っている間も、完全にひとりぼっちだ。
あぁ、この世は無情。
私のスキー1日目は、孤独に過ぎ去っていった。
ズドーーーン・・・
ご飯が喉を通らない私の口に、
さっちょんは遠慮なくエビフライをつっこんでくる。
さすがさっちょん。
親友の頼もしさに、また救われた気がした。
そして夕食後。
生徒がみんなそれぞれの部屋で騒いでいる中、
私は清井先生の部屋の前で立ち止まっていた。
スケベアーたちは怖いのか、
ガタガタと震えて息を潜めている。
ゆっくりと深呼吸をして、私は扉をノックした。
静かなその声に従って部屋へ入ると、
畳の上に先生が座っていた。
先生の正面に座ると
冷たい視線が向けられ、自然と身体がこわばった。
冷や汗をかきながらもそう叫ぶと
先生は小さくため息をついた。
あまりにもあっけなくて思わず声が漏れた。
ギクゥッ!!
バレてたんだ……!!
なぜかにっこりと笑みを浮かべた先生。
すごく嫌な予感がする。
絶 望 だ。
目の前が真っ暗になり、
まるで走馬灯のように遊佐くんの顔が浮かぶ。
死を覚悟した私に、なにやらボソボソと
スケベアーたちが囁いた。
まるで悪魔の囁きのよう。
私がぐっと顔を近づけると先生の瞳が困惑で揺れる。
ぎゅっと先生を抱きしめると、その顔はみるみる青ざめていく。
腕を振り払われて畳に尻もちをつく。
うずくまって身体を震わせる清井先生を見て
流石にやりすぎたと反省する。
先生は手袋をした手をぎゅっと握りしめている。
つらそうに顔を歪める先生に、何も言えなかった。
そう言って先生は私に背を向けた。
私はひとり猛省しつつ
とぼとぼと大浴場へと向かった。
少し時間が遅くなったからか、誰もいない。
真っ先に露天風呂に浸かっていると、
しばらくして誰かが入ってくる音がした。
気にせずにそのまま湯に浸かっていると
ガラリと露天の引き戸が開く。
そして入ってきたのはーーー
お互い目が合ったまま固まってしまう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。