第19話

潔癖先生のヒミツ知っちゃいました

雪山の冷えた空気が鼻先をツンと冷やす。

スキーウェアに身を包んだ私は、憂鬱ゆううつな気分で真っ青な空を見上げた。
心美
心美
(今日の呼び出し、絶対に生徒指導だよね?せっかくのスキーなのにぃい!!)
心美
心美
ううん…こうなったらいっそ
今日のスキーは楽しまなくちゃ!

そう決意した矢先……
あからさまな嫌悪の視線に気づく。

不運にも私の選んだ初心者コースの班には
あのいじわる女子達がいた。
心美
心美
(ぅう…こんなことなら無理してでも
さっちょんと同じ中級コースにすれば
よかった……)


後悔も虚しく私は女子たちに避けられてしまう。


板の扱い方を学んでいる間も、インストラクターさんと滑っている間も、完全にひとりぼっちだ。


あぁ、この世は無情。

私のスキー1日目は、孤独に過ぎ去っていった。












ズドーーーン・・・
心美
心美
こんなはずじゃなかったのに……
ご飯が喉を通らない私の口に、
さっちょんは遠慮なくエビフライをつっこんでくる。

心美
心美
もごっ!!
紗季
紗季
ほら食べないと
地獄の生徒指導で倒れるわよ
心美
心美
ごほっ、地獄なんて
怖いこと言わないでよ
紗季
紗季
とにかく今日は作戦中止よ?
心美
心美
今日は?
紗季
紗季
(そうよ!今日がダメでも明日!
私はまだ諦めてないわよ……)
さすがさっちょん。
親友の頼もしさに、また救われた気がした。






そして夕食後。

生徒がみんなそれぞれの部屋で騒いでいる中、
私は清井先生の部屋の前で立ち止まっていた。

スケベアーたちは怖いのか、
ガタガタと震えて息を潜めている。

ゆっくりと深呼吸をして、私は扉をノックした。
心美
心美
失礼します。助平ですが…
清井先生
清井先生
入りなさい

静かなその声に従って部屋へ入ると、
畳の上に先生が座っていた。

清井先生
清井先生
そちらに座って下さい

先生の正面に座ると
冷たい視線が向けられ、自然と身体がこわばった。
心美
心美
あの…パンツの件ですが
私ではありません!

冷や汗をかきながらもそう叫ぶと
先生は小さくため息をついた。
清井先生
清井先生
そうですか
心美
心美
え…それだけ?

あまりにもあっけなくて思わず声が漏れた。

清井先生
清井先生
ですがバスの勝手な席替えは
認められません

ギクゥッ!!

清井先生
清井先生
私が気づかないとでも
思っていましたか?

バレてたんだ……!!

なぜかにっこりと笑みを浮かべた先生。
すごく嫌な予感がする。

清井先生
清井先生
あなたには生徒指導が必要です
よって明日からスキーは禁止!
清井先生
清井先生
残り3日間かけて
その性根を叩き直してあげます
明日からは5時起き9時就寝!
まずは反省文20枚から始めましょうか
心美
心美
え―――?!

絶 望 だ。

目の前が真っ暗になり、
まるで走馬灯のように遊佐くんの顔が浮かぶ。
心美
心美
(ああ、スケベの神様…どうかどうか
最後に遊佐くんに会わせて下さい……)

死を覚悟した私に、なにやらボソボソと
スケベアーたちが囁いた。
スケベアー
スケベアー
アイツは女が嫌いだ!
スケベアー
スケベアー
心美が一番怖いはず!
スケベアー
スケベアー
抱きつけ!飛びつけ!
スケベアー
スケベアー
やっちまえー!!

まるで悪魔の囁きのよう。
清井先生
清井先生
どうしました?
返事は「はい」以外認めませんよ
心美
心美
先生……すみません
清井先生
清井先生
はい?

私がぐっと顔を近づけると先生の瞳が困惑で揺れる。

心美
心美
えいっ!

ぎゅっと先生を抱きしめると、その顔はみるみる青ざめていく。
清井先生
清井先生
は、はは離しなさい!
心美
心美
いやです!!
生徒指導は嫌なんです!!
許してくれるまで離しません!
清井先生
清井先生
やめなさいっ!!
心美
心美
いやです!!
せめて修学旅行中だけは!!
ご慈悲を!
清井先生
清井先生
や、やめろ離せっ!!
心美
心美
わっ!

腕を振り払われて畳に尻もちをつく。

うずくまって身体を震わせる清井先生を見て
流石にやりすぎたと反省する。
心美
心美
すみません…
先生は女が嫌いなんですよね?
心美
心美
どうしてですか?
清井先生
清井先生
……私は昔、
突然抱きついてきた女子を
突き飛ばしたことがあるんです
今の君のようにね
心美
心美
え……
清井先生
清井先生
そのせいで、その子は頭を打って
大怪我をしました
心美
心美
そんなっ
清井先生
清井先生
もっと情けないのは
私はその子が好きだったんです
なのに好きな子を拒絶した上に
大怪我をおわせてしまった……
清井先生
清井先生
それ以降女性に触れるのは怖い
不潔だ、何よりも私が不潔なのです

先生は手袋をした手をぎゅっと握りしめている。
つらそうに顔を歪める先生に、何も言えなかった。
清井先生
清井先生
今日はもう部屋に戻りなさい
あなたの処分については
また明日お伝えします

そう言って先生は私に背を向けた。








心美
心美
はぁ、
心美
心美
(私、先生に酷いことしちゃった……。あんなヒミツきっと誰にも話したくなかったはずなのに……)



私はひとり猛省しつつ
とぼとぼと大浴場へと向かった。

少し時間が遅くなったからか、誰もいない。


真っ先に露天風呂に浸かっていると、
しばらくして誰かが入ってくる音がした。


気にせずにそのまま湯に浸かっていると
ガラリと露天の引き戸が開く。





そして入ってきたのはーーー





風助
風助
……うわ?!
心美
心美
えっ……!?


お互い目が合ったまま固まってしまう。

リセイウチ
リセイウチ
嬢ちゃん、何しとんのや!
ここは男湯やで!