リビングに行ってそう言うと、おとんとおかんは「どうしたん?」と向き合ってくれた。
一人になりたい、そんなんじゃなくて。
僕やってもう大人やし、ちゃんと親から離れても生活できるようにしたい。
いつまでも、おとんとおかんに甘えてばっかりじゃだめなんや。
メンバーと一緒に生活するようになれば、自分の健康管理も、これまでおとんとおかんがしてくれてたこと全部、自分でするだけじゃなくて、メンバーのことだって気が付かなきゃいけなくなるのは分かってた。
でも、もっと強くなりたい。
僕のいったことに、おかんは口をぽかんとあけて動かなかった。
おとんの言葉に顔を上げると、
「でも」と僕を見た。
そう言ったおとんに頷くと、おとんはにこっと笑った。
そう言いながら頭わしゃわしゃ撫でられて、頷くと、「そうやろうな」って笑ってた。
ふと、何も言わないおかんと目が合うと、おかんは笑ってくれた。
涙を必死に隠して、笑うおかんに、胸の奥が熱くなった。
優しく頭を撫でてくれるおかんに、「頑張る」、そう呟いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!