第5話

重岡side
1,210
2018/05/30 12:54
7WESTでの雑誌撮影が終わって、それぞれが別の現場へ向かった。


神ちゃんと流星はドラマの撮影。

小瀧はレッスン。

僕は照史君と別の雑誌の撮影。


撮影に向かう前に、忘れ物を取りに、小瀧と一緒にレッスン場に行った。

忘れ物とって、これからレッスンの小瀧に「じゃあな~」って手を振って、玄関へ向かおうとした時、



「重岡」



自分の名前が聞こえて足を止めた。




声が聞こえた先は、僕らが絶対入らない、事務所の関係者が集まる小部屋だった。




ただ、興味だけでそーっと部屋に近づいた。

ばれないようにしゃがんで、耳を澄ます。






「」
だから前も言ったけど、重岡は今使ってやんないと。一応人気もあるみたいだしさ。


・・・今使ってやんないと?



聞こえた言葉が頭に何度も響いた。



「」
でもなぁ・・上がどう言うか
「」
大賛成するだろ!だって




ーだって、あいつもうすぐ死ぬんだし








ズキッと胸の奥が痛くなって、張り裂けそうになった。



あの後、余命がどうのこうの、同情で人気が出るだの、いろいろ言っていた。





どうやってその後レッスン場を出たか、どうやって撮影現場までたどり着けたか覚えていない。




名前も、何も知らない人に、自分のこと言われたってどうってことないのかもしれへんけど、




泣きたくて、泣きたくて、

胸に刺さった言葉を思い出しただけでも、気分が悪くなった。




別に、あの人たちにどう思われたってええやん。



何度もそう言い聞かせるけど、


でも、



僕なんか、生きてても、死んでも、結局どうでもいい人間なのかもしれへん。




現場についてたくさんのスタッフさんに挨拶されたけど、心がどんより暗くて、作り笑いさえも、苦しくてしょうがなかった。

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