7WESTでの雑誌撮影が終わって、それぞれが別の現場へ向かった。
神ちゃんと流星はドラマの撮影。
小瀧はレッスン。
僕は照史君と別の雑誌の撮影。
撮影に向かう前に、忘れ物を取りに、小瀧と一緒にレッスン場に行った。
忘れ物とって、これからレッスンの小瀧に「じゃあな~」って手を振って、玄関へ向かおうとした時、
「重岡」
自分の名前が聞こえて足を止めた。
声が聞こえた先は、僕らが絶対入らない、事務所の関係者が集まる小部屋だった。
ただ、興味だけでそーっと部屋に近づいた。
ばれないようにしゃがんで、耳を澄ます。
・・・今使ってやんないと?
聞こえた言葉が頭に何度も響いた。
ーだって、あいつもうすぐ死ぬんだし
ズキッと胸の奥が痛くなって、張り裂けそうになった。
あの後、余命がどうのこうの、同情で人気が出るだの、いろいろ言っていた。
どうやってその後レッスン場を出たか、どうやって撮影現場までたどり着けたか覚えていない。
名前も、何も知らない人に、自分のこと言われたってどうってことないのかもしれへんけど、
泣きたくて、泣きたくて、
胸に刺さった言葉を思い出しただけでも、気分が悪くなった。
別に、あの人たちにどう思われたってええやん。
何度もそう言い聞かせるけど、
でも、
僕なんか、生きてても、死んでも、結局どうでもいい人間なのかもしれへん。
現場についてたくさんのスタッフさんに挨拶されたけど、心がどんより暗くて、作り笑いさえも、苦しくてしょうがなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。