神ちゃんからメールが来た次の日、神ちゃんはレッスンに来てなかった。
今日は、レッスン場の僕らが絶対に足を踏み入れない部屋に事務所の人がいて、思い切ってドアをノックした。
チャンスだと思った。
7人でデビューしたいって、伝えなきゃ。
部屋に入った瞬間、そう言ったその声に、ビクッと肩が揺れた。
ー「だって、もうすぐあいつ死ぬんだし」
あの時と同じ声。
急に怖くなって、さっきまですぐにでも言えそうだった言葉は言えなくなってしまう。
その人はコーヒー片手に不思議そうな顔。
普通に顔を合わせているけれど、陰であんな風に言ってた人。
まともに目が合わせられない。
僕はぎゅっと拳を握って恐怖を隠して、すうっと息を吸った。
思い切って言うと、しばらく沈黙が続いたけど、その沈黙も、フッという笑い声に壊された。
そう言われて顔を上げると、何がおかしいのかその人は笑ってる。
そう言って部屋から出ろと言うしぐさ。
はっきりそう言われて、その人は僕の背中を思いっきり押した。
ーガチャッ!!
部屋の外に出されて、乱暴に閉められたドアにうなだれる。
怖い笑顔と、言葉に、めげそうになった。
どうしようもなくなってレッスン場を出て歩きながら、スマホを開いたときに映った写真。
みんなが僕の家に泊まりに来た時に、7人全員で撮ったみんな笑顔の写真。
みんなの笑顔を見たら、安心して、頑張ろうって思えた。
濱ちゃん、
神ちゃん、
流星、
俺、頑張るから。
3人も、諦めたらあかんよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。