第26話

神山side
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2018/06/14 15:55
神山
お茶入れるな
そう言ってしげを座らせてお茶を入れに行くと、しげは「ありがと」と笑って、しばらく無言だった。




神山
なぁ、なんか言いたいことあるんやろ
耐えきれなくなって思わずそう言うと、しげは「せやな」って頷いた。

重岡
なんで、メールの返信してくれへんの?
自分を落ち着かせて深呼吸し終わったしげが、優しく尋ねた。





何も言わなかった。


というより、言えなかった。





返事なんてできなかった。





何度も送られてくる、


ー諦めたらあかん



そんなメッセージは僕には重くて、なんの希望にもならへんかった。








神山
はい、お茶
お茶を机に置くと、しげはお茶を見もせず僕の腕を引っ張った。
重岡
なぁ、なんでレッスン来てないん?
そんな質問に軽く笑った。

神山
いや、やってもう行っても意味ないし。
やってさ、俺はいらん奴やってことやろ?
重岡
そんなことないよ。俺らさ、関係者に声かけてるねん。
でも俺ら4人だけじゃなくて、神ちゃん達も一緒に行けばきっと違うよ。

神ちゃん、諦めんといてや。


目をそらさず、何度も言われた言葉を今日も言う。



もう、聞きたくない。



そんな言葉、何の保証にもならへん。



神山
いい加減にしてや!!


気付けばそう怒鳴ってた。
神山
もう俺は無理やねん!しげには分からへんくらいいろんなことやってきて、自分の精一杯出し切ってきたんや!
もうすぐデビューできるかもしれへんって、自分でも自信あってん!
こんなに頑張ってきて無理やったんや!

諦めんななんて無責任なこと言うなよ!!


一気に行ってしまった言葉に、後悔なんてなかった。



もう嫌やねん。


4人が気を遣ってくれることが、しげが何度もこう言ってくれるのやって、



自分の傷がえぐられるようで嫌でしょうがないんや。



神山
デビューできたからそんなこと言えんねん!

俺はな!もうとっくの前に、諦めついてんねん!!

俺とお前は違うんや!!
顔を上げてそう言った瞬間、



ーパシッ



左頬に痛みが走った。




目を開けると、涙を必死にこらえるしげが、僕をまっすぐに見てた。



神山
な、なにすんねん!!
頬を打ったしげにそういったのと同時に、しげの目から涙がボロボロとあふれた。
重岡
・・俺は、神ちゃんとずっと一緒におるねん。
神ちゃんの才能くらい知ってるし、神ちゃんが俺にないもんいっぱい持ってるんも知ってるんや。
しげはそう言うと涙をぎゅっとぬぐった。


重岡
なんで自分から諦めるねん!
一緒に夢叶えようって頑張ってきたんは嘘やったんか!?


大声でそう言われた。

でも、涙を流しながらも必死に言葉を選んで、ずっと冷静だった。



動揺しながらも、そのことだけはちゃんと分かった。





神山
しげ・・俺はしげより長いことジュニアやってんねん。

やから分かるんや。

もう、俺はジャニーズではやっていけない。
しげから見て才能あったって、上の人から見たらいらん人やねんって。


そう言うと、しげはお茶を僕の方へ移動させて立ち上がった。



重岡
仲間の言うこと、もっと信じろよ。



しげはそう言うと、家を出ていった。





その場から動けなかった。



じんじんと痛む頬をさすることもできず、ただ、呆然と立ってるしかできなかった。

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