そう言ってしげを座らせてお茶を入れに行くと、しげは「ありがと」と笑って、しばらく無言だった。
耐えきれなくなって思わずそう言うと、しげは「せやな」って頷いた。
自分を落ち着かせて深呼吸し終わったしげが、優しく尋ねた。
何も言わなかった。
というより、言えなかった。
返事なんてできなかった。
何度も送られてくる、
ー諦めたらあかん
そんなメッセージは僕には重くて、なんの希望にもならへんかった。
お茶を机に置くと、しげはお茶を見もせず僕の腕を引っ張った。
そんな質問に軽く笑った。
目をそらさず、何度も言われた言葉を今日も言う。
もう、聞きたくない。
そんな言葉、何の保証にもならへん。
気付けばそう怒鳴ってた。
一気に行ってしまった言葉に、後悔なんてなかった。
もう嫌やねん。
4人が気を遣ってくれることが、しげが何度もこう言ってくれるのやって、
自分の傷がえぐられるようで嫌でしょうがないんや。
顔を上げてそう言った瞬間、
ーパシッ
左頬に痛みが走った。
目を開けると、涙を必死にこらえるしげが、僕をまっすぐに見てた。
頬を打ったしげにそういったのと同時に、しげの目から涙がボロボロとあふれた。
しげはそう言うと涙をぎゅっとぬぐった。
大声でそう言われた。
でも、涙を流しながらも必死に言葉を選んで、ずっと冷静だった。
動揺しながらも、そのことだけはちゃんと分かった。
そう言うと、しげはお茶を僕の方へ移動させて立ち上がった。
しげはそう言うと、家を出ていった。
その場から動けなかった。
じんじんと痛む頬をさすることもできず、ただ、呆然と立ってるしかできなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!