第2話

ゆうれい
43
2021/08/04 09:57
 独りのおとこのこがいました。その子は親もおらず孤児院ですごしていました。もともと友達をつくるのが苦手だったこともあり、その子はずっと独りでした。
 
 そんなある日その子はある男の子と出会いました。でも男の子は孤児院の子どもではありませんでした。その子が夜遅くこっそり孤児院を抜け出して街を歩いていたときに出会った子でした。
 
 彼もひとりぼっちでした。2人はすぐに仲良くなってこの世でたった2人のふたりぼっちになりました。彼はいろんなことをその子に教えてあげました。勉強はもちろん最近の流行りや社会のルールなど。おかげでその子は外の世界で困ることはありませんでした。
 
 しかし、楽しい日々は長くは続きませんでした。外に出ていることがバレてしまったのです。その子はそれ以来外に行くことができなくなりました。ずっとずっと心のなかであの子に会いたいと願っていました。
 
 そんなときその子は風邪を引いてしまいました。当時風邪を引いて多くの子どもがなくなっていました。もちろんそのことも彼から聞いていたのでその子は自分も死んでしまうだろう。と思いました。それなら最後にあの子にまた会いたい。とその子は毎晩熱に苦しみながら一生懸命お願いしました。
 
 冬も深まり雪が積もりはじめたある晩、その子は熱がさがらないなか不思議な夢をみました。知らない人からお菓子を貰う夢でした。
『外国ではハロウィンというものがあって、子どもはおばけや妖怪になって大人たちにお菓子を貰うんだよ。』
 
 目が覚めると手には夢で貰ったお菓子が握られていました。その子は夢をヒントにおばけの布をかぶって何とかバレないように外にでようと考えます。もし見つかっても驚かせてその隙に逃げようとしたのです。
 
 とうとう決行の夜がやってきました。その日は風邪は治っていなかったけどやけに体がかるくいつもより元気でした。真夜中の12時にその子は孤児院を飛び出しました。計画は成功したのです。
 
 急いであの子のところに行かなくちゃ!その子は裸足で雪の積もった道を駆け抜けます。風邪なんて気にしてられません。その子の頭はあの子のことでいっぱいです。ようやくいつもあの子と会う場所に着きました。
 
 そこにはあの子がいました。
 
 あの子は眠っていました。
 
 その子はあの子が起きないのは真夜中だからだと考えました。
 
 でも本当は違ったのです。あの子は眠るように死んでいたのでした。そのことに気づいたときにはもう遅かったのです。その子も限界を迎えていました。風邪をひいて、熱もだしているなか裸足で雪のなかを駆け抜けてきたのです。
 
その子はあの子の隣に座りました。

あの子と同じように空をみあげました。

空には雲の隙間から三日月が見えました。
 
2人はふたりぼっちで死にました。
 
その子はあの子に別れを告げることはとうとうできませんでした。
 
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 それ以来その子はおばけの変装をして夜になるとあの子をずっと探しています。

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