[ゆめまる視点]
帰ってきたあなたの顔は
朝なのに夕陽に照らされたように赤かった。
意外にも俺の次に気付いたのはてつやで、
一瞬、フッと表情がなくなった後に嬉しそうに
笑った。
どこまでも友達思いな奴だ。
どちらも嘘のない自分の気持ちなんだろう。
分かりやすいのに、分からない。
あなたはとしみつに懐いているように見えて
てつやにも懐いてる。
陸上部だし、妹だからとか言って会話の輪に
入れてあげたりするから本当の兄のように
慕っているんだと思う。
…別に恋に発展したっておかしくないのに。
あなた「あっ、みんな。」
メイ「…どうだった?」
てつや「お皿持ってきてないってことは食べてる途中ってことだよね、ほら、早く行かないと遅れて怒られる!」
としみつにあなたの赤い顔を見せないようにわざと目の前に立っている。
下手くそな演技。
多分気付いているであろうメイと目を見合わせた。
としみつはてつやの声を聞いて慌てた。
としみつ「なんだ、まだ遅刻するような時間じゃないやん。」
あなた「そうだよね…。びっくりした。笑」
まだ少しだけ赤い顔でそう返した。
としみつ「あなた?こっちきて。」
あなた「え?なに?」
あなたのおでこに手を当てて体温を確認する。
その顔に下心なんて一切なくて心配した顔だった。
てつや「やれやれ、余計なお世話だったか。」
小さい声で困ったようにてつやが笑った。
としみつ「風邪引いた?」
あなた「えっ、ううん、走って帰ってきたから暑くて。」
としみつ「なんだ、心配したがや。笑」
メイ「ほら。そろそろ行くよ!」
あなた「あっ、うん!」
りょう「ただいまー。」
りょうが少しだけ気怠そうに手を振った。
あなた「りょうく…りょう、大丈夫?」
また赤くなった顔のあなたが震える声で話した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。