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第3話

残された3人へのメッセージ(後書き有)
411
2019/09/15 16:08
太宰side


ある日。ふと遺書の存在を思い出した。
墓の前でびりびりと封筒を破き綺麗な真っ白な便箋を取り出した。
彼の綺麗で繊細な文字は変わらなかった。

「太宰さんへ
きっと、怒ってますよね。先に逝く事をお許しください。
僕は元から身体が悪かったのです。貴方が僕にした事は僕に役立ちました。
僕は彼等より長く生きれました。僕は幸せです。
あの日、拾われた日のことはずっと覚えています。
貴方が居なくなった日も、強くなったねとおっしゃった日も。
ずっと覚えています。僕の宝です。
いままで有難うございました。

最後の我儘を聞いてください。
太宰さんは、生きてください。まだ、死なないでください。お願いです。
僕の分まで生きてください。」

君は意地悪だ。最後までぽんこつでバカで愚かだ。
ボロボロと涙が零れる。
便箋の文字が涙で滲んでゆく。
なんて綺麗で優しい残酷な我儘なのだろうか。
2人の前でこんなに泣くなんてみっともない。袖で拭い、ふと笑みを零す。
仕方ない聞いてあげるよ。
君の最期の我儘くらい聞いてあげる。
そこまで鬼じゃないからね。
でも、織田作に迷惑かけちゃ駄目だよ。
君はぽんこつなんだから。

優しい笑みで2つの墓を見詰めた。
風が強くなった。
でも、優しい風だった気がする。

「心配したが大丈夫そうだな」
「安心しました……」

そう、声が聞こえた気がした。
敦side

そういえば彼奴が死んでからどれだけたったんだろう。
ふと、押し入れの中で寝そべっていると脳裏に浮かんだ。
本来ならすぐ寝付けれるのに………。
そう思いながら、のそりと押し入れから出て外に出ようと着替える。
鏡i花ちゃんは寝てるから大丈夫かな。
ゆっくりそっと音を立てないように部屋から出た。
外の空気は少し冷えていた。でも心地良かった。
潮風が心地良い…彼奴には毒だけど。
なんて、もう居ない奴の心配しても意味無いか。
そういえば手紙…今読もう。
鏡i花ちゃんの前では読みにくいもんな。
どうせ彼奴の事だ。嫌いだとか死ねだとか何故貴様が太宰さんにだとか書いてあるんだろうな。
なんて思いながら苦笑を零し封筒を破って開ける。
中から綺麗な便箋を出した。

「中島敦へ
今まで貴様に突っかかって申し訳無い。
心配する貴様を無下にしすぎたな、すまぬ。
だが貴様を恨んでいたのも嫌っていたのは事実だ。
だが、憎めなかった。嫌いになれなかった。
然し貴様の優しさに触れてみたかったと今更思う。
だが、まぁ良い。
貴様の事は好きだ。
それに認めている。自信を持て。

最後に願いを叶えてくれるか。
鏡花を光の世界で正しき道に導いて欲しい。
もっと綺麗な道を歩ませてほしい。
僕には出来ぬ事だ。貴様に任せよう。
人虎、頼んだ。」

嘘だ、こんな、彼奴が、僕の事を嫌いなくせに。
何で、最後に、こんな、嘘だ。
ぼろぼろと涙を零す。今になって後悔がいっぱい溢れ出す。
本当に彼奴が…?これを書いたのか?
だが、紙からは確り芥川の匂いがする。
彼奴が…鏡花ちゃんの事を気にかけてたなんて、分からなかった。
どうして……?
もっと早く言えば良かったのに
僕も…もっと早く言えば良かった。
優しく声をかければ良かった。
後悔が今更になって溢れ出る

どれくらい経ったのだろうか
分からない。だが、落ち着いてきた。
もう後悔しても何もかも遅い
なら、せめて━━━━━━━━━━━━━━━

後日、 鏡花ちゃんに手紙を見せた。
彼女は大きく目を見開いて信じられないと僕を見た。
彼女は俯いて涙をこぼしていた。頭を撫でて落ち着くまでそばに居た。
2人で話して彼奴に会いに行くことにした。
今日もあの人は来ていたみたいだ。綺麗な花があった。
僕らは2人で手を合わせた。
僕もお前の事嫌いじゃないよ、芥川。
僕も認めてる。お前の強さ。

花が揺れて返事をした━━━━━━━━━━気がした。
中原side

報告書をまとめるために芥川の使っていた部屋に行った。
まだ片付けられていないため芥川が生きている気がした。
然し全く物が無い。
執務室だが俺の部屋はもう少し物がある。が、全く無い。
もしかして彼奴…早く死ぬ事を分かって物を増やさなかったのか…?
なんて考えてたりするが流石に考えすぎか。
単に物に関心無かったからだろうな。
と綺麗にまとめられた本棚や机の引出しを見る。
引き出しの中に少し大きめのお菓子の空き缶みたいなのを見つけた。
何だこれ……と思いながら引っ張り出す。
その中には押し花やら包帯、キーホルダーとかでいっぱいで。
どれも見覚えのある物ばかり。
彼奴、大事に閉まってたんだな。
とじっと物色してた。
嗚呼、そうだ、遺書まだ読んでねぇなとふと思い出して椅子にどっかり座り封筒を丁寧に開けて便箋を取り出した。
丁稚の事だ、きっと下らない事だとか青鯖の事書いてんだろうなとか思いつつ紙を広げる。

「中也さんへ
僕は貴方の事が好きでした。
きっと、嫌われていると思っていますよね。
ですが、彼の人が居なくなった際に支えてくれたのは貴方でした。
幼くまだ何も分からなかった僕にマナーや礼儀作法を丁寧に教えてくれた。
凄く嬉しかったです。
本来なら口から言うべきですが言い難くこの様な形になった事をどうかお許しください。
今まで有難うございました。
銀や樋口、黒蜥蜴をどうかお願いします。
貴方が長く生きて幸せになれますように。」

嗚呼、そうだった。芥川の丁稚はこういう奴だった。
無口で何を考えてるか分からない。本当に馬鹿な奴だ。
まさか泣かされるとは思わなかったな。
この箱といい、この手紙といい………彼奴は優しくて、良い奴なのに。
芥川が幸せだったなら俺はいい。
手紙を元の通りに戻して大切そうに握った。
さて、今日は、あいつらの面倒を見てやるか。
仕方ねぇ頼まれても無いが、くそ太宰も見てきてやるか。
稀には一緒に飲むのもいいか…この手紙の事話して自慢しねぇとな。
零れた涙を拭いて、部屋を片付けた。彼が使っていた頃の状態に。
仕事はまだいっぱいだ。それに……急な任務も入ったからな。
そして彼の執務室から出ていった。
きっかけは定期的に発作として出る推しを死なせたくなる病でツイートをしたことです。
一言のつもりが長くなって………最終的には、遺書を書き残しましたね。
本当にいい加減にすべき。
地味にBEASTネタもぶっ込んだりしてみました
BEASTネタは織芥の小説から引用したものです。(聞いてない)
珍しい事に今回は腐向けじゃないです。
また出来たらあげます。
しばらくは自分のpixivで投稿した小説から引用して投稿します。
ここまで読んで下さり有難うございました。
またの機会がありましたらよろしくお願いします。

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