第8話

何を悔いる?
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2022/03/28 05:39
センラside
カツン…カツン…カツン…カツン…
地下牢の階段をゆっくり降りていく。


1番奥の牢の前に行くと鉄格子に手をついた。
センラ
坂田…
奥に膝を抱えて座る坂田が横目に俺を見た。
坂田
あぁ、センラか。
センラ
お前、どういうつもりや?
坂田
どういうつもりって、何が?
センラ
つまんない嘘…ついてんじゃねぇよ…
坂田
ふふ、つまんない嘘って?
センラ
(ガッ!)
坂田の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
センラ
ふざけんじゃねえよッ…なんで…なんでそんな嘘つくんだよ!
坂田
…ほんとに、わかんないの?
センラ
俺の問いにこたえろ!
坂田
いいや、俺が聞く。なんで俺を、あんなにも蔑ろにしたん?
センラ
なんのことや…
坂田
お前から…理不尽なことを言われてお前が家を出ていく度、俺はすごく寂しく、惨めな気持ちになった…それが、わかるか?
センラ
こんな嘘をついたこと…お前は少しも悔いてないのか?
坂田
悔いるとは、何を?
お前がこうして、俺に逢いに来てくれたのに…そして、俺の目を見て話してくれてるのに…何を悔いるんや?
センラ
もう…もうやめろ…
坂田
でも、俺が求めてた瞳とは違う。
あの人に…志麻さんに向けていた瞳とは違う。心は得られなくても、暖かい眼差しと、優しい言葉が欲しかったのに…。
お前は、それすらももう…くれないんだな。
センラ
坂田…!
坂田
まだなんかあんの?
もう死ぬから…心の準備しときたいんやけど?
センラ
…お前は、
坂田の頬を撫でた。
坂田
何?
センラ
お前は、人狼とちゃう。
なのに、お前が死ぬなんておかしい。
別れてもこいつは、坂田は俺の大切な人や。
絶対に死なせたくない。死んで欲しくない。
センラ
頼むから…ほんとのこと言ってくれ。
坂田
坂田がキュッ、と下唇を噛んだ。
センラ
坂田?
坂田
帰ってよ。
もう…眠いから。
センラ
坂田、でも…
坂田
帰れよ!!!!
坂田が俺の手を払い除けて怒鳴った。
センラ
ご、ごめん…
俺は時々後ろを振り返りながら階段をのぼって言った。
地下牢から出ると、そらる達がたっていた。
そらる
坂田は、人狼じゃないよ。
センラ
…え?
そらる
さっき占ったんだ。そしたら、彼は村人だった。
センラ
だったら…尚更死ぬのがおかしい…
そらる
問題はそこじゃない。
なんで坂田がそんな嘘をついたかってことだよな。
志麻
脅された…とかじゃない?
うらた
脅された?
まふまふ
あ、確かに!
本物の人狼に、誰かを人質にとられてって…ありえるかも!
センラ
でもどうして坂田なん?
他にもおったやろ。
まふまふ
ん…まぁ、そうですけど…
志麻
処刑は…中止には出来ないの?
そらる
ムズいだろうね。坂田は自分から言ってるから、急に"やっぱり違います、嘘です"なんてただの命乞いにしか聞こえないよね。
うらた
そんな…
センラ
そんなの、あんまりや。坂田が…
そらる
そういえば、志麻さんの疑いは完全に晴れたのかな?
まふまふ
晴らしましたよ!
村長はただの人だったので、遺伝的に志麻くんは人狼じゃないって言いました!
うらた
良かった…
志麻
でも、そのせいで、坂田さんが…
センラ
絶対助ける。絶対死なせない…
俺は拳を強く握りしめた。

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