第5話

向き合うという事
17
2019/02/15 13:18
あの日から私は向き合うことにした
昼だろうが、朝だろうが聞こえてくる足音
部屋中に鳴り響く声
あたしにとっては全てが恐怖だ
だけど、向き合うと決めたからには向き合う
そう決心した翌日
おばさんが亡くなった
頭がまた真っ白になってしまった
どういうこと?
確かにあの日おばさんからは薄い影が視えた
そして、今日亡くなった
どうやら、病気だったらしい
でも、何故こんなにも早く…
もし、あたしが本当に母さんの力を受け継いでるなら会えるんだろう?






会いたい

理由なんていらない
ただ会いたい…
今日は、学校が休みで家にいた。

こんな嬉しい日に残酷な知らせ
こんなにも明るく、最高な天気なのに
あたしは、暗く感じた
昨日会えたのは虫の知らせだったんだろうか?
それとも、奇跡…?

そう1人で寂しく思っていた時だった
おばさんの声が聞こえた。
おばさんの話によると助けを求めて居る声だと言う

あたしはその声に耳を傾けた
澟
おばさん?
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
そうよ。凛ちゃん
澟
どうしたの?
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
聞いてくれるの?
澟
あたし、自分の力と向き合うことに決めたの
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
そうなのね…
澟
うん
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
話していいかしら?

頼んでも大丈夫?
澟
あたしに出来ることなら
澟
なんだって聞く!
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
ありがとうね…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
実は、あたし息子がいるの
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
凛ちゃんも知ってると思うけど
澟
うん。知ってるよ
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
私ね、息子にあたしが病気だと言うこと伝えてないの
澟
…え?
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
だから、話したいの…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
伝えたいの…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
あたしの想いを…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
澟ちゃん…お願い…
澟
わかった、やってみるよ
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
ありがとうね…
そう言って、おばさんは消えた
もちろん、おばさんの息子さんがどこに居るのかなんて分からない

だけど、見つけたい
この力で、救える想いがあるなら…!
そう思いあたしは、家を出た
息子さんを探しに
宛もなく、家を出たから何も手がかりなんて無かった

ただ、何もわからず葬式場へたどり着いた
もしかしたらここにあるのかもしれないと思い
あたしは、足を運んでいた
だがここは広すぎて迷ってしまう
澟
ここどこ?
どうなってんの?
そう迷っている時ある男性が声を掛けてくれた
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
どうしましたか?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
大丈夫ですか?
澟
えっと、今日亡くなってしまった響子おばさんの知り合いのものです
澟
響子おばさんとは、あたしが両親をなくした頃からずっと支えてもらいました
澟
そのお礼が言いたいんです
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
そうなんですね…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
母さんは優しい人だからたくさんの人を助けていましたから
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
あなたの言葉が理解できます
澟
息子さんですか?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
はい。
息子です
その方は、響子おばさんの息子さんだった
こんなにも早く見つかるとは思ってもなかったが見つかってくれて幸いだった
私は、おばさんの頼みを叶える事にした
澟
おばさんは、なんで亡くなったんですか?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
わかりません…。
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
元々病弱だったけど、情けないことに全く…
澟
そうなんですね…
そう話している時、おばさんらしい影が視えた
無意識にあたしは、影を掴もうと手をかざしていた
すると、一瞬にして明るかった空が暗くなった
辺りを見回すと、おばさんの息子さん以外の皆の動きが止まっていた
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
え?
あたしも、初めての状況に戸惑っていた
すると、足音が聞こえた
コツコツ。
ヒールの音が鳴り響く
近づくとそこには、おばさんの姿があった
息子さんも、あたしも固まっていた
第一声を上げたのは意外にも、息子さんだった
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
母さん?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
何故…?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
錯覚?
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
澟ちゃんありがとね♪
願いを叶えてくれて
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
やり方がわかったのね
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
あなたの想いが、人を救うの
澟
おばさん…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
どういう事だよ…?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
母さん…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
おれ、今喋ってんのか?何をみてんだ?
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
光輝あたし貴方に言ってなかったことがあるの
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
なに…?
こわいよ…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
あたしは、ガンだったの。
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
え…?

ガン…?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
なんで言わなかったんだよ!
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
亡くなった後に言うなんて、卑怯だろ!
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
なんで言わなかったんだよ?!
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
ごめんね…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
だけど、自分を責めないで欲しいの
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
貴方は、責任感が強く人に優しい子だから…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
きっとあたしの死も、自分がそばにいなかったら…なんて責めてるんでしょ?
息子さんは、言葉を失っていた
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
…。
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
母さんが、亡くなったのは僕がそばにいれなくて仕事仕事で何もしてあげれなかったから…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
だから…。
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
でも、病気のことゆってくれても良かっただろ…?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
なのに、なんでだよ…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
ずっと自分のせいだと思ってた
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
ごめんなさいね…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
あなたには、そのままでいて欲しかった
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
あたしの元へは帰らず、そのままの貴方でいていて欲しかった
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
こんなの、ワガママだけど貴方のその姿があたしに勇気をくれた
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
どれだけ離れていても親子の縁は切れないものよ
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
こんな自分勝手な親だけど、こんな私を許してくれる?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
なんでそんな…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
でも会えないだろ。
なら俺は誰か勇気を与えんだよ
ほんと勝手だな…
そういって息子さんの頬から涙がつたう
言葉が出てこない。
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
許すも何も、居なくなったら許すことさえ出来ないだろ?!
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
そうね…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
許せないことをしてしまったものね…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
たとえ私を許せなくても、自分自身を許してあげて…
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
貴方はあなたのままで生きて欲しい
近所のおばさ ん        響子
近所のおばさ ん 響子
あなたが生きること。
それが答えだから
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
何言ってんだよ…
息子の頬から涙が消えることはなく、おばさんは姿を消した

そして、葬式場にいたたくさんの方の止まっていた動きがまたおばさんが居なくなった瞬間皆動き始めた

あたしは、救ったの?
あたしは、息子さんに声をかける
澟
大丈夫ですか…?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
俺は、ずっと東京の隅の方で働いてたんだ
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
もう、家を出て何年なるんだろう?
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
東京から離れたわけではないからいつでも会えた
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
会おうと思えば、会える距離だった
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
だけど、会わなかった

昔から家は裕福ではなくていつも虐められてた
母さんも俺も
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
何才になっても…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
それが嫌で惨めで苦しくて、母さんから逃げたんだ
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
その時から母さんとは何年もの間会っていない
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
そして今日亡くなった…。

俺が逃げなかったら
亡くなっていなかったのかもしれない
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
そう思っていたんだよ
澟
そうだったんですね…
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
だけど、母さんはそんな俺を攻めていなかった
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
こんな俺のどこから勇気を貰ったのかわかんないけどまた、母さんに救われた…
そう言って息子さんは後悔を口にした
あたしは、一体どんな言葉でなにを言えばいい…?
何も思いつかない…
そんな時だった
息子さんがある言葉を口にした
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
ありがとうね、母に会わせてくれて
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
おかげで、鬱憤が晴れたよ笑
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
母さんは、俺を誇りに思ってくれていたけど
俺はそんな人間なんかじゃない
だけど、最後に会って話せてよかった…
あたしは、どう励ませばいい?
だけどきっと、おばさんならこう言うだろう
澟
勇気あるお方だとあたしは、思いますよ
澟
だって、逃げることが出来たんだから
澟
逃げることも勇気です。
澟
逃げたい!そう思ってもなかなか逃げられない

だけど、あなたの決意が勇気に変わったんです
澟
そして、自分の生き方を見つけた貴方は勇気ある人です
そう応えた。

こんな言葉で何が救えるんだろうか?
たとえ傷を背負った者でも、誰かの傷を背負うのは難しいものだ
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
ありがとう…♪
だけど、息子さんはありがとう。と笑顔で笑って式場へ戻られた
おばさんの息子     光輝
おばさんの息子 光輝
気をつけてね!
あたしが背を向け帰ろうとした際
息子はあたしに「気をつけて」そういい手を振った


この日私は初めて、1人の傷を救った

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