あの日から私は向き合うことにした
昼だろうが、朝だろうが聞こえてくる足音
部屋中に鳴り響く声
あたしにとっては全てが恐怖だ
だけど、向き合うと決めたからには向き合う
そう決心した翌日
おばさんが亡くなった
頭がまた真っ白になってしまった
どういうこと?
確かにあの日おばさんからは薄い影が視えた
そして、今日亡くなった
どうやら、病気だったらしい
でも、何故こんなにも早く…
もし、あたしが本当に母さんの力を受け継いでるなら会えるんだろう?
会いたい
理由なんていらない
ただ会いたい…
今日は、学校が休みで家にいた。
こんな嬉しい日に残酷な知らせ
こんなにも明るく、最高な天気なのに
あたしは、暗く感じた
昨日会えたのは虫の知らせだったんだろうか?
それとも、奇跡…?
そう1人で寂しく思っていた時だった
おばさんの声が聞こえた。
おばさんの話によると助けを求めて居る声だと言う
あたしはその声に耳を傾けた
そう言って、おばさんは消えた
もちろん、おばさんの息子さんがどこに居るのかなんて分からない
だけど、見つけたい
この力で、救える想いがあるなら…!
そう思いあたしは、家を出た
息子さんを探しに
宛もなく、家を出たから何も手がかりなんて無かった
ただ、何もわからず葬式場へたどり着いた
もしかしたらここにあるのかもしれないと思い
あたしは、足を運んでいた
だがここは広すぎて迷ってしまう
そう迷っている時ある男性が声を掛けてくれた
その方は、響子おばさんの息子さんだった
こんなにも早く見つかるとは思ってもなかったが見つかってくれて幸いだった
私は、おばさんの頼みを叶える事にした
そう話している時、おばさんらしい影が視えた
無意識にあたしは、影を掴もうと手をかざしていた
すると、一瞬にして明るかった空が暗くなった
辺りを見回すと、おばさんの息子さん以外の皆の動きが止まっていた
あたしも、初めての状況に戸惑っていた
すると、足音が聞こえた
コツコツ。
ヒールの音が鳴り響く
近づくとそこには、おばさんの姿があった
息子さんも、あたしも固まっていた
第一声を上げたのは意外にも、息子さんだった
息子さんは、言葉を失っていた
そういって息子さんの頬から涙がつたう
言葉が出てこない。
息子の頬から涙が消えることはなく、おばさんは姿を消した
そして、葬式場にいたたくさんの方の止まっていた動きがまたおばさんが居なくなった瞬間皆動き始めた
あたしは、救ったの?
あたしは、息子さんに声をかける
そう言って息子さんは後悔を口にした
あたしは、一体どんな言葉でなにを言えばいい…?
何も思いつかない…
そんな時だった
息子さんがある言葉を口にした
あたしは、どう励ませばいい?
だけどきっと、おばさんならこう言うだろう
そう応えた。
こんな言葉で何が救えるんだろうか?
たとえ傷を背負った者でも、誰かの傷を背負うのは難しいものだ
だけど、息子さんはありがとう。と笑顔で笑って式場へ戻られた
あたしが背を向け帰ろうとした際
息子はあたしに「気をつけて」そういい手を振った
この日私は初めて、1人の傷を救った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!