ジリジリジリジリ。ジリジリジリジリ。
太陽の日が、まだどこか眠たげな柔い光が、部屋に射し込む。
そんな朝。
部屋中に鳴り響く聞きなれたアラーム音を、止める。
実は、今起きた訳では無い。
本当はアラームの鳴る30分程前に、既に起きていた。
別に特に理由はない。
今日が入学式だから、新しい始まりだから、
とか、そんな特別な期待を抱いて早く起きた訳でもない。
___そう、今日は入学式。
制服を買ったあと、1回も洗わずに箪笥にしまい込んでいたため、
箪笥の中の木の匂いと、
どこか不思議で、不慣れな雰囲気を漂わす、
新品の匂い
が混ざった匂いがした。
朝食を終え、身支度が遅い母を置いて先に家を出た。
まあ、身支度が終わっていたとしても、母と並んで歩いて学校まで行く気には到底なれない。
別に、母が嫌い、とかではない。
ただ、高校生にもなって並んで歩くのが…。
これが、思春期…
と言うのだろうか。
まあどちらにせよ、これから1人で学校に行かなきゃ行けないわけだし、丁度いい。
学校には既に、人だかりが出来ていた。
写真を撮り、親同士で話し、同じ中学だった者同士ではしゃぎあい。
僕には到底、無関係な光景だ。
邪魔な人混みを払い除け、体育館の壁に貼られたクラス表の自分のクラスを確認し、
体育館に用意された、空いてる席へと座る。
開始まであと20分程ある。
やはり、早く来すぎた。
母と一緒にのんびりこれば良かった。
そう後悔しながら、じっと、
ゆっくり時間が経つ時計を眺めて、ぼーっとする。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!