第5話

彼女の、口元。
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2018/02/20 08:12
退屈な入学式も終わり、指定された自分のクラスへと移動をする。

友達とはしゃぎ回っていたり、
親と話しながら歩いていたり、
携帯をいじりながら歩いていたり。

移動中の動作は人それぞれだったが、
きっと、みんな緊張をしているんだろうな、
と思う。
まあ、実を言えば、自分の話。

すると横から、スターチスの香りがした。

再び、僕の思考は彼女に戻される。

そして、僕の横をスラリと通り過ぎてゆく。

周りの男子の視線が全て彼女に向けられる。

まるで、彼女の居る場所だけが、浮いているみたい…な?

…ん?
まてよ、浮いてるって…。
それじゃまるで…

と脳みそが言いかけたところで、
また、彼女と目が合う。

今度は少し、微笑みかけられた。


その口元から、僕の中の何かが動き出した。

…彼女の目元は、どこか悲しげだった。


なぜ、そんな顔をするのか。
僕は、不思議で、不思議で、
夜もあまり眠れなかった。



彼女とは同じクラスだった。

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