しばらく祖母と星奈さんと3人で話していると、祖母に看護師から声がかかった。
祖母が出ていった後の静まり返った病室は居心地が悪くて、俺は早々に彼女に話しかけた。
いきなり呼び捨てがいいとか…
変なヤツ。
陽葵の、表情が、凍りついた。
かと思えば、一瞬後には笑顔に変わっている。
なんなんだ、一体。
何故か、耳を塞ぎたくなった。
ここから先は聞くべきではない。
そう本能が警告していた。
だが、俺は何も出来ずに、結局続きを聞くこととなる。
どうせ軽い病気だろうと思っていた。
だってこんなにも元気そうなのに…
ほんの少しの、息継ぎの後、陽葵は続きを口にした。
つい声を荒らげると、陽葵は悲痛な面持ちで叫ぶように声を出した。
陽葵に同情したわけでも、可哀想に思ったからでもない。
ただ、俺は本心からそう言った。
陽葵は暫しぽかんとした後、小さく笑った。
そこから、沈黙が、続いた。
さっきのような気まずい沈黙ではなく、どこか、心地よい沈黙だった。
数分…いや、数秒だったかもしれない。
陽葵が急に声を発した。
予想外の言葉に戸惑っていると、陽葵はいたづらな笑みを浮かべてもっと驚く続きを口にした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。