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まだ重い瞼をゆっくりと開くと、部屋は外の日差しが差し込みすっかり外も明るくなっていた。あの後すぐ寝ちゃったんだ、私。
時計を見るともう11時だった。
こんなに寝てたの! でも、寝たのはほぼ朝だったし…私はわりと起きるのが苦手だし。
しょうがないか、なんて思って私はベッドから起き上がった。
ぐーーっと固まった体をほぐすように伸びをする。
こうやって起きてみると、昨日のことが全て夢だったんじゃないか…とか思ってしまう。でも、あの怪物に襲われそうになった時についたかすり傷が地味に痛むから本当なんだって感じる。
こんなかすり傷気づかなかったな。気づけるほど余裕もなかったんだな。
扉の外から聞こえてきた声に、思わず緊張して体が強ばる。
そう返事をすると、ジソンさんは入るよーと言って部屋に入ってきた。
ジソンさんは優しく微笑むと、私の隣に腰をかける。それと同時にジソンさんから心地よいお花のような匂いがして、心がすーっと溶けていくような感じがした。
嗅いだことはないのにすごく落ち着く、懐かしい匂い。
そういえばあんまりちゃんと食べてなかった。
それを思い出して急にすごくお腹が空く。
グゥ〜……
あ、
抑えきれない空腹で、お腹がなってしまった。
うそ、恥ずかしすぎて消えそう。塵になりたい。
そうやって優しくしてくるジソンさんにさらに恥ずかしくなる。絶対顔が赤い。絶対顔に出てる。
見られまいと私は俯いた。
ジソンさんはまたふふっと微笑んで、私の頭を撫でた。さっきのことが恥ずかしすぎてそれどころじゃないのに、その行動にまた恥ずかしくなる。
彼は立ち上がり、部屋から出ていった。
いちいち自分が間抜けに思えてきて死にたくなる。
そんなこと言ってないで早く準備して食堂行かないと。待たせたら悪いし、なにか手伝わないと。
私は布団から立ち上がって衣装棚から洋服を取り出す。やっぱりどれも高そうな服ばっかりで、どれを着ようか迷う。
派手すぎてもあれだし、地味すぎるのもあれだし……
急に後ろから聞こえてきた声に私は大声をあげる。それにびっくりしてその人も声を上げた。
なんだその癖は?
と疑問に思ったけど、デフィくんもグール。きっと狩りのためにそれが身についたんだろうなってすぐに分かった。
デフィくんは自慢げに言って、私の前に並んだ洋服を選び始めた。
これはどうかなー、これでもないなー、って1人で喋りながら選んでいく。私はデフィくんが選んでるのを横からただ眺めてるだけ。
すると、私の方をじっと見つめて少し考えると、デフィくんは1着の淡い青かのワンピースを手に取った。
さりげなく可愛いとか言ってくるし、また照れてしまう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。