第20話

彼らの話
1,016
2018/04/06 16:27
食事を終えてそれぞれが部屋に戻る中、ジソンさんとミニョンさんはまた片付けをしていた。
今度こそ手伝おう。そう思って声をかける。
○○
あの、私も手伝いますよ
ミニョン
いいの?部屋に戻ってても大丈夫だよ?
○○
いえ、大丈夫です。むしろ作ってもらったので手伝いたいんですよ
ミニョンさんは微笑みながら、私を見つめる。
ミニョン
あなたちゃんはいい子だね。
○○
そんなことないですよ!
ミニョン
しっかりした子、僕は好きだよ
っ!

別に私が好きって言われたわけじゃないのに、なんだか照れくさくて顔に熱が集中する。
ジソン
やーミニョア、口説くなよ!
聞いていたジソンさんは横からツッコミを入れてくる。それに対してミニョンさんもごめんなって笑ってたから、そうだね、冗談だよ。
何本気で照れてんだろう。
ミニョン
でも、本当に好きだよ。そういう子
○○
えっと……
ミニョン
ふふ、そんな照れないで?
ジソン
純粋なあなたちゃんにそんなこと許さないよ!
ミニョン
ヒョンは何目線なんですか
ジソン
あなたちゃんの保護者!
○○
なんです、それ
お母さん味の強いジソンさんについ笑ってしまった。
ミニョン
じゃあそろそろ手伝ってもらおうかな
○○
何したらいいですか?
ミニョン
んーと、お皿とか片付けるのは僕がやるから、あなたちゃんは机を吹いてもらっていい?
○○
わかりました
ミニョンさんから布巾を受け取って、片付けたところを拭いていく。
こんな簡単なことで大丈夫なのかな?

そう思いながら机を拭いていると、ふと考える。そういえば、彼らはヴァンパイアやグール、インキュバスなんだよね。
私と同じように普通の食事も取れるのかな。食べてたなら、とれるってことだよね。
でもそれで栄養になるの…?
ジソン
俺は洗い物するよ
ミニョン
どうしたの?
ミニョンさんはお皿を持ったまま私に話しかけてきた。
○○
あ、すみません。少しぼーっとしてて
ミニョン
…聞きたいことがあるなら聞いてもいいよ
全て見透かしているように、彼は笑いながら言ってきた。
そんな顔に出てたかな、。聞いたら失礼かななんて思っていたのに。聞かれたら嫌かなって思ってたのに。
でも聞いていいなら…
○○
あの、ミニョンさんたちは普通に人間の食事だけでも大丈夫なんですか?
ミニョン
と、いうと?
○○
私と同じようにさっきみたいにご飯が食べられるなら…危険な狩りをする必要も無いんじゃないのかなって…
ミニョン
なるほど…
ミニョン
あのね、実際僕達は人間の食事だけでも生きていけるは生きていけるんだよ
○○
、! そうなんですか。
ミニョン
でも、問題があって。
人間に合わせて作られた食事だと、僕達にとっては栄養がほぼ取れないんだ。つまり、人の肉や血、あるいは獣の血肉じゃないと十分な栄養が得られない。
それに…
ミニョンさんは少しだけ目の色を変えて、私に言った。
ミニョン
人間の食事だけでは、飢えて…極限まで飢えてしまったらもうそれはただの悪魔になってしまうんだよ。……仲間や家族すらも食らう、悪魔にね。
○○
そ、そうなんですか…
やっぱり、人間の食事だけじゃだめだったんだ……。そうだよね。人間とは違うんだから、それは当たり前だ。
ミニョン
あ、でもジソンイヒョンはちょっと違うな
○○
ジソンさん?
そっか、ジソンさんたちの種族は人の血や肉を食べないもんね。
……それなら、彼らの飢えって…?
ミニョン
ヒョン達の種族、インキュバスは人間の食事でも正直生きていけるんだよ。
でも本当に食べるものは人の精だから……つまり、分かる?
○○
つまり…なんですか?
聞き返すと、ミニョンさんはニヤッと笑って言った。
ミニョン
ヒョン達は飢えたら、女の子を無理やり…
ジソン
ミニョア!!!
途中でジソンさんが叫んで、ミニョンさんは止まった。
なんだろう、ジソンさん。すごく怒ってる……?
ジソン
なんの話してるのかと思って近づいてみれば、なんだよ。あなたちゃんにそんなこと言う必要ないだろ
ミニョン
ヒョン、ちょっとした小話のつもりだったんですけど…
ジソン
限度っていうものをわかって話せ!
ましてや女の子に対してそんな話…
ミニョン
…ごめんなさいヒョン。
○○
あ、あの……ごめんなさい。私が聞きたいって言ったんです。
ジソン
……あなたちゃん…
○○
だから、ミニョンさんは悪くないですよ。
ジソンさんがそんなに怒るなんて思ってもなかった。やっぱり失礼なこと聞いてしまったんだ。私は部外者なのに、彼らのことをそんな深入りしてはいけないんだ。
ジソン
…俺こそごめんね、ついカッとなっちゃって。大きな声出してびっくりしたでしょ?
○○
大丈夫です、
ミニョン
…ヒョン。ごめんなさい
ジソン
…ミニョンもごめん。でも、その話はやめてほしい。
ミニョン
わかりました。
ジソン
……さ、もう片付けは大丈夫だよ。
あなたちゃんありがとうね、部屋に戻りな
そうやって優しく微笑んでくれるジソンさん。
それも彼の優しさなんだろうけど、余計に申し訳なくなる。
でも、大人しく戻らないと。図々しい奴だって思われたくない。
私は少しだけ頭を下げて、食堂を出た。

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