食事を終えてそれぞれが部屋に戻る中、ジソンさんとミニョンさんはまた片付けをしていた。
今度こそ手伝おう。そう思って声をかける。
ミニョンさんは微笑みながら、私を見つめる。
っ!
別に私が好きって言われたわけじゃないのに、なんだか照れくさくて顔に熱が集中する。
聞いていたジソンさんは横からツッコミを入れてくる。それに対してミニョンさんもごめんなって笑ってたから、そうだね、冗談だよ。
何本気で照れてんだろう。
お母さん味の強いジソンさんについ笑ってしまった。
ミニョンさんから布巾を受け取って、片付けたところを拭いていく。
こんな簡単なことで大丈夫なのかな?
そう思いながら机を拭いていると、ふと考える。そういえば、彼らはヴァンパイアやグール、インキュバスなんだよね。
私と同じように普通の食事も取れるのかな。食べてたなら、とれるってことだよね。
でもそれで栄養になるの…?
ミニョンさんはお皿を持ったまま私に話しかけてきた。
全て見透かしているように、彼は笑いながら言ってきた。
そんな顔に出てたかな、。聞いたら失礼かななんて思っていたのに。聞かれたら嫌かなって思ってたのに。
でも聞いていいなら…
ミニョンさんは少しだけ目の色を変えて、私に言った。
やっぱり、人間の食事だけじゃだめだったんだ……。そうだよね。人間とは違うんだから、それは当たり前だ。
そっか、ジソンさんたちの種族は人の血や肉を食べないもんね。
……それなら、彼らの飢えって…?
聞き返すと、ミニョンさんはニヤッと笑って言った。
途中でジソンさんが叫んで、ミニョンさんは止まった。
なんだろう、ジソンさん。すごく怒ってる……?
ジソンさんがそんなに怒るなんて思ってもなかった。やっぱり失礼なこと聞いてしまったんだ。私は部外者なのに、彼らのことをそんな深入りしてはいけないんだ。
そうやって優しく微笑んでくれるジソンさん。
それも彼の優しさなんだろうけど、余計に申し訳なくなる。
でも、大人しく戻らないと。図々しい奴だって思われたくない。
私は少しだけ頭を下げて、食堂を出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!