第32話

駄目だって分かってるけど
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2018/04/17 19:07
>>ウジンside  (少し短め)


まだ眠くない。



そういったヌナを気安く部屋に誘ったのは俺だ。仲良くなれたからって、もっと親しくなりたいって思って。
ヌナなら来てるれるって思ったから誘ったんだ。変な気はなかった。

部屋に行く時にさりげなく手を繋いでも、何も言わずに受け止めるヌナに少しだけ焦りを感じた。

なんで嫌がらないんだろう。

俺のこと、嫌じゃないの?誰と繋いでも平気なのかな。俺だけなのかな。
そんなこと色々考えてもヌナには伝わらない。
勢いでヌナを押し倒したりなんて……咄嗟に離れたけどああ、こんなの絶対ヌナに怒られる。
そう思ってたのに、ヌナは優しく笑って許してくれる。



眠そうにするヌナに腕枕をしたら、それでさらに落ち着いて寝ちゃうし。

近すぎなければいいって。さっきそういったのはヌナだよ…?なのに今は俺の腕の中にすっぽり収まって、鼻先が着いてしまうんじゃないかってくらいこんなに近くにいる。
ウジン
…ねぇ、ヌナ…
話しかけても答えるはずもない。
ただ子供のように眠るヌナを見つめることしか出来ない。






気安く部屋に誘ったのは俺だ。仲良くなれたからって、もっと親しくなりたいって思って。
ヌナなら来てくれるって思ったから。変な気はなかった。




…そのはずなのに。



触れたい。ヌナに触れたい。
そんな無防備に寝てる姿が、ヌナから香る人間がつける香水なんかじゃない優しい甘い匂いが。その全てが俺を惑わせる。
ダメだってわかってる。こんなの絶対だめなのに。
ウジン
…少しだけ…ね。
俺は眠るヌナの頬に、ゆっくりと口付けた。
それだけで俺の中の悪の部分が暴れてしまいそうで。欲のままにヌナを傷つけてしまいそうだった。それを押し殺して俺は目を閉じる。



失敗した。気安く部屋に呼ぶんじゃなかった。


俺はそのまま葛藤しながら朝が来るのを待った。

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