>>ウジンside (少し短め)
まだ眠くない。
そういったヌナを気安く部屋に誘ったのは俺だ。仲良くなれたからって、もっと親しくなりたいって思って。
ヌナなら来てるれるって思ったから誘ったんだ。変な気はなかった。
部屋に行く時にさりげなく手を繋いでも、何も言わずに受け止めるヌナに少しだけ焦りを感じた。
なんで嫌がらないんだろう。
俺のこと、嫌じゃないの?誰と繋いでも平気なのかな。俺だけなのかな。
そんなこと色々考えてもヌナには伝わらない。
勢いでヌナを押し倒したりなんて……咄嗟に離れたけどああ、こんなの絶対ヌナに怒られる。
そう思ってたのに、ヌナは優しく笑って許してくれる。
眠そうにするヌナに腕枕をしたら、それでさらに落ち着いて寝ちゃうし。
近すぎなければいいって。さっきそういったのはヌナだよ…?なのに今は俺の腕の中にすっぽり収まって、鼻先が着いてしまうんじゃないかってくらいこんなに近くにいる。
話しかけても答えるはずもない。
ただ子供のように眠るヌナを見つめることしか出来ない。
気安く部屋に誘ったのは俺だ。仲良くなれたからって、もっと親しくなりたいって思って。
ヌナなら来てくれるって思ったから。変な気はなかった。
…そのはずなのに。
触れたい。ヌナに触れたい。
そんな無防備に寝てる姿が、ヌナから香る人間がつける香水なんかじゃない優しい甘い匂いが。その全てが俺を惑わせる。
ダメだってわかってる。こんなの絶対だめなのに。
俺は眠るヌナの頬に、ゆっくりと口付けた。
それだけで俺の中の悪の部分が暴れてしまいそうで。欲のままにヌナを傷つけてしまいそうだった。それを押し殺して俺は目を閉じる。
失敗した。気安く部屋に呼ぶんじゃなかった。
俺はそのまま葛藤しながら朝が来るのを待った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。