ご馳走様でした。
お昼ご飯をすませて、私は部屋に戻ろうとしていた。片付けを手伝おうとしたんだけど、まだ来たばかりだから部屋に戻ってていいよって帰されてしまった。
……といっても、デフィくんやジフンくんに対応するのに精一杯で来た道を覚えてない。
んんー、ジソンさんとミニョンさんは片付けをしてるし邪魔できないもんね。
どうしよう。
とりあえず適当に歩いてればつく説!!
そう思って歩いてたんだけど、普通に迷ってしまった。こんな家憧れたことはあるけど、実際入ってみるとこんな苦労があるのね……。
適当にカンで歩きながら、上に上がる階段を登っていると誰が上から降りてきた。
段の先にいる男の子を見ると、びっくりしたように目を丸くさせていた。
その様子に私もびっくりする。
まだ会ったことない子だ。
それだけ言って階段を上がりきろうとしたら、その子に呼び止められて足を止めた。
わあああなんか地味に恥ずかしいやつだ。
すぐに立ち去ろう。この階じゃないならさっきの階かその下だ!
そのもしかしてです。
そう言うと彼は黙って歩き出す。
わ、結構歩くの早いんだ。私は小走りで彼のあとを追いかけた。
さっきの食堂を出た廊下の階段から下の階に降りて、まっすぐ左に歩けば私の部屋だったらしい。意外と簡単な道だったから尚更恥ずかしい。
そう言うと彼はそそくさと歩いていった。
あの子も人見知りなのかな。…そういえば名前聞くの忘れてた。
部屋に戻ってもそわそわ感が消えないのは知らない家だし当たり前だよね。家に帰りたい。思うことはそれがほとんどで…。
私が知り合ったここの住人さんたちは、たぶん私が会った人立ちで全員なら11人。
11人だよ…
身元も詳しく知らない男の人11人といきなり一緒に暮らすだなんて、誰だって戸惑うし嫌に決まってる。
どうしよう、どうするべき…。
あ、あの人たちが寝静まった時に家を出ればいいかな。真っ暗の森なんて危ないし怖いけど、ここにいるよりマシだろう。
よしそうしよう。
森で迷って帰れないだなんて大嘘よね、そんなの。道がなくなるなんてそんなこともない。私を逃がさないための嘘だよ。
そうと決まればすぐに行動。
私は夜のためにあらかじめある程度の準備を終わらせた。荷物が少なくて助かったかも。
荷物をベッドの下に隠し、これであとは夜を待つだけ。
……いい。きっとこの人達は悪い人たちなんだ。誘拐だか監禁だか、なんだか知らないけど…いい人に見えて極悪人ってありえなく無い。
私は絶対にこの洋館を出る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。