保健室には、私とあめ君しかいない。
あめ君が、付けてくれた消毒液が
じわりと染みる。
口先から、思わず
自分の抑えらない気持ちが溢れた。
あめ君…お願い
何か言って…
どうせ、振られるなら
はっきりと言って欲しい
あめ君は、私の親指に
ばんそうこうを、貼ると
私の事を、じっと見つめた。
私は、ゴクンと唾を飲み
あめ君から、視線を外す。
あめ君は、椅子から
離れると私の目の前に立った。
目をギュッとつぶる。
嫌われてしまったかも、しれない
私の頭の上を、あめ君が
ポンと撫でた。
涙が、ツーと
こぼれた。
その一言で、私は
泣いちゃうくらいあめ君が
好きになっていた。
こっ、これは…私の事を
試しているのだろうか?
あめ君が、微笑みながら
私に、質問の答えを言わせようと
してくる。
上目遣いで、私に
そう言ったあめ君…
あれ?あめ君って、こんな
イジワルな人だったけ?
あめ君は、柔らかい
クシャッとした笑顔で
と、答えた。
私は、顔を真っ赤に
しながら、慌てふためいた。
私の手を、あめ君が
優しく握ると
と、私のマネをしたので
2人して笑ってしまった。
今、とてつもなく
私の心は、ふわふわドキドキ
して、いて…
初めて実った恋に戸惑いながらも
嬉しくてしょうがないよ。
やっぱり、恋の神様は
いたのかもしれない…
あめ君と、ずっと一緒に
いたい…
私は、あめ君に
気づかれないように、ありがとう
と、小さく呟いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。