子供の時に買ってもらった
ギター。
俺は、あれから独学で弾き方を
学んで、簡単な曲なら少し弾けるようになった。
ギターを、買ってくれたじいちゃんは、
子供の時からの、一番の理解者だ。
珍しく、夢をみた。
それは、子供の時の記憶に一番近かった。
バイ〜ン…ジャッ、ジャ…パキッ
じいちゃんと、過ごせたのは
小学校の高学年まで、だった。
脳こうそくで、1回倒れてたせいで
2回目になった時…じいちゃんは
天国に飛びだった。
そして、夢の記憶が
変わる…
確か、この記憶は…
高校に入って、まもない頃の
記憶だ。俺の母さんは、少し
心配症な性格だった。
進路なんて…今まで自分で
決めてこなかった。
小学、中学と順番に通い
家から近い高校に行って…その先は
知らない、わからない。
夢なんか、とくに決めてなくて…
それでも、時間は進むし
いつか、決断をする日が来るんだろう。
自分は、今…寝ているはずなのに
見る夢全てが…ひとつの記憶と
なって映る。
そして、また場面が変わる。
これは、一番新しい
最近の記憶だ。
夢の中に、羽島さんが
出てきた。
近くに、ギターケースを
探すが、なぜか見つからない。
自分の中に、秘めていた気持ちを
思わずもらしてしまう。
相手は、夢の中の羽島さんだ。
返事なんて返ってくるはずは、ないんだ。
その時…背後に誰かが
立っている事に気付いた。
気付くと、結海姉さんも、羽島さん
の姿も消えていた。
俺は、俺自身…どうしたいんだ。
ずっと学生で、いられるわけでも
ない…
卒業したら、羽島さんの隣に
今みたいにずっといられない
かもしれない。
それでも、羽島さんと一緒に
歩んでいくには、彼女が
傷つくことも、考えながら
過ごさなといけない。
違う進路になった時…
彼女の手を、離さないためには
どうすればいいのだろうか…
そして、それでも
まだ…羽島さんが、横にいてくれるなら
すごく嬉しい。
気がつくと、ベッドから、ズレ落ちて
いた。
朝の6時は、とても静かだった。
カーテンを、開けると
朝日が、見えてとても綺麗だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。