季節は巡り…もうすぐバレンタイン
の時期となりました・・・
バレンタインまで、残り1週間を
切った学校の、教室では
数名の女子が、バレンタイントークで
盛り上がっていた。
私が、そう言うと、光が
少し考え込むような、仕草をする。
私も、なんだか嬉しくなる。
高校1年生になって、光と友達に
なり…バレンタインのチョコを
一緒に作れるなんて今から
ワクワクがとまらない。
光は、「だから練習するんでしょ」
と笑っていた。
放課後になり…あめ君に
事情を話すため、第2音楽室に向かう。
ガラー
扉を、開けると、あめ君が
いつものようにギターを
弾いていた。
あめ君は、ギターを横に下ろすと
私を見つめる。
ガラーと、再びドアを
閉め…フウと深呼吸する。
い、今ので伝わったかな?
よし、光の所へ急ごう。
私は、駆け足で光が待つ、校門前へと
向かった。
光と、合流すると
私は、初めて光の家に行くことになった。
私と、光は普段は
べつ別の方向に帰るのだけど…
今日は、光と一緒に下校している。
なんか新鮮だなぁ
そして…歩くこと30分弱…
私は、マンションに住んでいるけど
光の家は、一軒家だった。
小さな庭も、少しあり…
住宅地の中にあるといった所だろうか…
家に入るやいなや、すぐに
ガチャンと光は鍵を閉めてしまった。
光は、目を細めて笑った。
笑っているのに、少し怖い気が
するのは、何故だろう?
邪魔って…たぶん響君
の、ことだよね?
荷物を、置き
光にエプロンを貸してもらう。
手を洗い、板チョコをまな板の
上に置くと準備は、完了。
さすが、光…
板チョコが冷蔵庫に、入ってる次点で
本当は、響君にも作ってあげようと
してたんじゃないかと、思ってしまったけど
それは、言わないでおこう…
その後私たちは、チョコを刻んだり
湯煎して溶かしたり、型に入れたりと
せっせとチョコレート作りに
励んでいた。
光が、チョコレートを
冷蔵庫に入れようと持ち上げた
瞬間…ガラーと勢い良く
リビングのドアが開いた。
響君登場!!
ケラケラと、光を指差しながら
笑っている彼を、光が
呆れたような顔で、見つめる。
響君は、光の持つチョコレートを
受け取ると、まだ固まっていない
チョコを、嬉しそうに眺める。
光は、響君から
チョコを、取り返すと冷蔵庫に
しまった。
響君は、そのまま
立ち去ってしまった。
2人のやりとりを、見てれば
わかる…光は、同情なんて
本当はしていないってこと。
嘘だ…光は、そんなこと
絶対思ってないよ。
響君だって、他の子にチョコ貰える
ようになっても…わざわざ
光の所へ、来るんだから。
初めて、見た。
こんな、悲しそうな光…
いつも、明るくて
頼りがいがあって、強くて…
でも、いつも助けてもらってる分
私も、光の役に立ちたい!
私は、冷蔵庫を
指差す。
気がついて!光…
自分の、本当の気持ちに…
光は、顔をしかめる。
知らなかった。光は、それを気にして
たんだ…
だから、チョコは、もうあげないって
言ったんだ。
たぶん、響君も知らなかった
話だ。
私は、今にも泣きそうな親友の手を
ギュッと握りしめた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。