私は自然と聞き返していた。
仁俊哥の言ってることを今さっき自分も体験したのだから理解できるし、駅員さんに聞いた話とも合っていたから分かるはずなのに。
.
仁俊哥は笑ってた。
綺麗な涙を流しながら。
だって、仁俊哥はこれから大人気のアイドルになって
今まで苦労した分、
みんなに愛されていくんだよっ……??
なんでそんな私の命なんかを救うために未来まで捨てちゃうの…?
何故か、口からすらすらと言葉が出てきた。
記憶が全て戻ってくるような感覚に陥る。
だって、、私…
リスカに自殺未遂、クラスメイトからの嫌がらせ、教員からの嫌がらせ。
日常茶飯事に過ぎなかった。
その時の唯一の希望が仁俊哥で何もかも自暴自棄になってあなたを守れるならって……
そう思って…
仁俊哥は私を抱き上げて自分の膝の上に座らせると優しく私を抱きしめた。
まるで子供をあやす時、泣き止んで欲しい時にするように
だから、まだ…帰れる
あの世界に自分の事を覚えてくれている人が居なくなると二度とあの世界に戻れない。
そして今ここにいる生死の境目に2度きたものは……っ、
“もう二度と元の世界へ戻れない”
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!