ガタン……ゴトン、、、
電車が揺れる音がして目が覚める。
あれ、、私以外に乗ってる人居ない…。終点まで行く人って少ないのかな、
なんて考えたけれど、周りの景色が明らかに違うことに気づく。
どこか見覚えがあるのに、思い出せないような…
空が、赤黒かった。
外の景色が暗くて不気味だった。
ここが“死後の世界”かと勘違いしてしまうほどに。
放送““きさらぎ駅。きさらぎ駅。””
放送が流れると、電車が止まる。
それに、伴って体が揺れる。
ドアが開いて、降りるなと体全体が拒否するのに勝手に体が電車から降りる。
駅には
“きさらぎ駅”
とだけ書いてあって駅員さんも居らず、改札も開いたまま。
ただ、不気味な世界が広がっていた。
そのまま線路に降りてでも歩いて、帰ろうとすればよかったのに、
私は歩いて奥へ進んだ。
薄暗くまるで空間がうねうねしているような森の中へ。
_____________
どれくらい時間が経ったのか分からない。
スマホは圏外だし、駅に戻る道も分からない。
それに、気のせいなのかさっきから足音が追いかけてくる様な。
気の所為であって。
私はただ、仁俊哥に会いたいだけだから。
そう思いながらも疲れて座り込む私に足音が近づいてきた。
もう、ダメかもしれない…
そう思って目をぎゅっと瞑った。
___なんで、
ぎゅっと後ろからの温かさを感じると、そこには大好きで大好きでたまらなかった仁俊哥。
ぎゅっっっと壊れそうなくらいに抱きしめた。
もう二度と居なくならないで。そんな気持ちが籠ってたと思う。
仁俊哥らしくもなく泣いていた。
涙を流しながら必死に私の肩を掴んで訴えている。
言葉を失った。
“また”??
私は生きてる。
今まで死んだことなんて…ないのに
いや、確か韓国へ行った時、記憶を思い出した時に……?
「なんで私死んでないの?」
そう声を漏らしたはず。
え、、じゃあ……………なんで?
自然と涙が溢れた。
だって、……っ…なぜ私が生きているのかなんて想像がついたから。
私の問いに気まずそうに目を逸らす仁俊哥。
……っ……
声に出したくもない、信じたくもない事実を口に出した。
だって、ウィンウィンさんの話を聞く限りあの時私は死んだはずだから。
それに………ここに来るまでの景色に見覚えがあったのは1度ここに来たことがあるから。
だったらここは死後の世界で仁俊哥が代わりになったとしか考えられない。
私の目には涙が溢れていた。抑えきれないほどに沢山。
面影すらも感じない。
いつもいた場所なのにこんなにも雰囲気が違うだけで同じ場所とは思えない。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。