第34話

告白
4,403
2021/01/10 08:15
デートの日から少したったある日の放課後。



壱馬くんといつものようにたまり場に向かうと、幹部部屋にはまだ誰もいなかった。
川村壱馬
川村壱馬
学校でなんか呼び出しがあったのかもな……。
あなた、悪いけど俺、下のやつらにちょっと呼ばれてて。30分くらいで戻ってくると思うから、待っててくれるか?
白濱(なまえ)
白濱あなた
うん、わかった!
壱馬くんは急いで下に降りていった。



私はとくにすることもないから、本を手にとってページをめくる。
藤原樹
藤原樹
……あなた
白濱(なまえ)
白濱あなた
へっ!?
誰も居ないはずの部屋で名前を呼ばれ、思わずとび上がる。



顔を上げると、樹くんがトイレから出てくるところだった。
白濱(なまえ)
白濱あなた
樹くん……びっくりした
藤原樹
藤原樹
ごめん。……壱馬は?
白濱(なまえ)
白濱あなた
用事があるって下に行ったよ。30分くらいで帰ってくるって
藤原樹
藤原樹
……そっか
樹くんは私の隣にストンと腰を下ろした。



どうしたんだろう、突然隣に座るなんて……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
えっと、どうかした?
藤原樹
藤原樹
……俺が女嫌いな理由……壱馬たちから聞いた?
白濱(なまえ)
白濱あなた
少し前に、壱馬くんから義理のお姉さんのせいだって聞いたけど……
けど、詳しいことは聞いてない。



何があったのか、どうして女性恐怖症になってしまったのかは……。
藤原樹
藤原樹
……少しだけ、昔の話してもいい?
どこか決意のようなものを含んだ声にゆっくり頷くと、樹くんは1度大きく気を吸ってから話し出した。
藤原樹
藤原樹
……実はさ、小学生の時に……そいつに襲われかけた
……え?
藤原樹
藤原樹
義理の姉ってのは、父親の再婚相手の連れ子のことなんだ。7歳上なんだけど、最初は普通に仲が良かったのに、だんだん身体を触られるようになって……
淡々と語りながら、それでもどこか顔色が悪い。
白濱(なまえ)
白濱あなた
樹くん……
これ以上無理して話さなくていい、そう言おうとした私の声を遮るように、言葉を続けた。
藤原樹
藤原樹
ある日家でふたりきりになった時、突然服を脱がされた。俺は仲のいい姉弟になりたいと思ってたのに、向こうは無理やり恋愛関係になろうとしたんだ
その時のことを思い出したのか、少し体が震えている。
藤原樹
藤原樹
ちょうどその時に父親が帰ってきて、俺は助かった。父親はそのことを理由に離婚したし、あれ以来その人とは会ってない。でも、それからずっと女がダメなんだ
そうだったんだ……。すごく……怖かったよね。



しかも当時小学生でしょ?



きっと、想像できないほどの恐怖だと思う。
藤原樹
藤原樹
でも……あなただけは違った
白濱(なまえ)
白濱あなた
え?
藤原樹
藤原樹
……他のやつは、俺の女嫌いを直そうとして無理に触ってきたりしたから
そういえば言ってたね、初めて会った時に……。
藤原樹
藤原樹
あなたはそんなことしなかったし……それに亜嵐さんの妹って知って親近感湧いて。知らないうちに……
樹くんはそこでいったん言葉を区切った。



何を言われるんだろうと、次の言葉を待っていると。
藤原樹
藤原樹
……好きになってた
え?
藤原樹
藤原樹
……ごめん。でも怖いって感じなかったのはあなただけだったから
頭の中、少し混乱状態。



『好き』……。それって、恋の方の……?
藤原樹
藤原樹
……べつに困らせたいわけじゃなくて、正直な気持ちを伝えたかっただけ
そんな……そんなこと……。



私が戸惑っているとドアが開いた。
吉野北人
吉野北人
ただいま〜
白濱(なまえ)
白濱あなた
お、おかえりっ!
慌ててそう言って立ち上がる。
吉野北人
吉野北人
って、樹、近いよ!接近注意報発令!
北人くんがわずかに頬を膨らませて言う。
白濱(なまえ)
白濱あなた
そ、そんな接近なんてっ
続いて部屋に入ってきた壱馬くんが、眉を寄せた。
白濱(なまえ)
白濱あなた
か、壱馬くんっ!おかえりっ
川村壱馬
川村壱馬
……接近?
白濱(なまえ)
白濱あなた
し、してないっ
とはいったものの……心の中がざわざわして、落ち着かない。
川村壱馬
川村壱馬
ふうん……
壱馬くんの声に、思わず目を伏せてしまう。



でもそりゃそうだよ。



だって私樹くんに告白、されちゃったんだもん……。

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