第28話

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2021/01/04 07:54
たまり場について、壱馬くんがゆっくりバイクを止めた。
川村壱馬
川村壱馬
大丈夫か?気分悪くなったりとかしてないか
白濱(なまえ)
白濱あなた
うん……大丈夫。これ、ありがとう、ごめんね
そう言って貸してもらったジャケットを渡す。



ジャケットのこともだけど、そもそもこんなことになったのは私が勝手に出ていったせいだもんね。



そう思ってうつむいていると。
川村壱馬
川村壱馬
謝る必要ねぇよ
そう言ってくりゃりと髪を撫でられた。



……え?
川村壱馬
川村壱馬
ちょっと濡れてる。でもサラサラだな
驚いている私をよそに、するすると髪をなでる壱馬くん。
川村壱馬
川村壱馬
……こういう髪、好き
ぼっ!!っと、顔が真っ赤になる。



す、すす、好きって……。



私の髪を、好きだって言ってくれた……。



『好き』といった壱馬くんの声がいつまでもエコーのように頭の中で響いて、なんだかぼーっとしてしまう。



けど、……ちょっと待って。



壱馬くんってこんな恥ずかしこと言う人だっけ?



しもこんなにサラッと……。



__じーっと壱馬くんを見てみると。
川村壱馬
川村壱馬
っ……クシュッ……
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん、もしかして風邪ひいちゃったんじゃ……!?
川村壱馬
川村壱馬
あー……風邪?さあ、どーだろな……
絶対風邪だー!!



無理もないよ!



雨の中、バイクでずっと体を濡らして冷えたはず……!



私はジャケットを貸してもらったし、今のところ大丈夫たけど……壱馬くんを助けなきゃ!
白濱(なまえ)
白濱あなた
か、壱馬くん、とりあえず中に入ろう?
川村壱馬
川村壱馬
ん……
壱馬くんを支えようとすると、トンっと肩に重みがかかった。



か、壱馬くんの顔が間近にっ……!



かあああ……と真っ赤になっていると。



__ブオオオオオオン!



バイクの音がして、急ブレーキをかけて壱馬くんのバイクの横に止まった。



ヘルメットを取ったのは……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
北人くんっ!
吉野北人
吉野北人
あなたちゃん?……と壱馬!?
北人くんは私と壱馬くんを見て大慌てでバイクから滑り降りると、私の肩から引き剥がすようにして壱馬くんを支える。
吉野北人
吉野北人
ちょっと壱馬、大丈夫?
北人くんが声をかけても、ぐったりしている壱馬くん。
吉野北人
吉野北人
このままじゃ看病もできないね。壱馬、頑張って階段上がって!
そうして北人くんも一緒に支えてくれながら、なんとか部屋にたどり着く。



ドアを開けると、夏喜くんも帰ってきていた。
中島颯太
中島颯太
あ、やっと帰ってき……って壱馬!?
颯太くんがそう言ってコントローラーを放り出す。
中島颯太
中島颯太
ちょ、すげぇ熱あるやん!樹!お前も手伝え!
藤原樹
藤原樹
なんで……
中島颯太
中島颯太
ええから!
そうして北人と颯太くんが壱馬くんを運び、樹くんは壱馬くんの部屋のドアを開ける。



私と颯太くん、北人くん、樹くんの3人が入り、美紅ちゃんも入ろうとしたけど、夏喜くんに遮られた。
堀夏喜
堀夏喜
ダメだよ、ここは壱馬の場所。許可した人しか入れないんだ
西条美紅
西条美紅
なにそれ!?あの子は!?
私を指さして言う美紅ちゃん。



ゆ、指さされた……。
堀夏喜
堀夏喜
あなたは壱馬が許してるから。君はあっち
西条美紅
西条美紅
そんなぁ!!
美紅ちゃんは夏喜くんに引っ張られて、さっきの場所に戻って行った。



ほっと息をつく。
白濱(なまえ)
白濱あなた
どう……?
吉野北人
吉野北人
酷い熱だな。壱馬、この頃ちょっと風邪気味っぽかったし……
そうだったの?
白濱(なまえ)
白濱あなた
とりあえず体温計と氷枕持ってきて。あと湿らせた大きめのタオル。お願い!
北人くんたちが壱馬くんの服を着替えさせている間に、私はテキパキと指示を出していく。



お兄ちゃんも無理して頑張りがちな人で、よく風邪をひいてたから……看病には慣れてるんだ。



執事には内緒で世話をしたりもしていたし。



なんだか懐かしい。



みんなが頼んだものを持ってきてくれて、それを受け取る。
白濱(なまえ)
白濱あなた
ありがと
少しして、ピピピピッとなった体温計を取りだした。
吉野北人
吉野北人
どうだった?
北人くんが、持っている体温計を覗き込んで、絶句。
吉野北人
吉野北人
さ、39度……
考えただけでしんどくなる……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
とりあえず氷枕しよっか
吉野北人
吉野北人
そうだね
北人くんから氷枕を受け取り、壱馬くんの頭を持ち上げて氷枕を置く。
吉野北人
吉野北人
幸せ者だなあ、壱馬って
中島颯太
中島颯太
ほんまそれやで
藤原樹
藤原樹
……うん
北人くんと颯太くん、樹くんの言葉に首を傾げる。



ど、どういう意味だろう?
吉野北人
吉野北人
まあいいけど。あ、僕この後出なきゃ行けないんだけど、壱馬のこと任せていい?
中島颯太
中島颯太
あー、俺もや
白濱(なまえ)
白濱あなた
うん、わかった。2人とも頑張って?行ってらっしゃい!!
そう言って微笑むと、北人くんと颯太くんの顔がみるみる赤くなった。
吉野北人
吉野北人
あ、ありがとっ!行ってくるね!
北人くんがそう答えたのと同時にガチャりとドアが開いて、夏喜くんが入ってきた。
堀夏喜
堀夏喜
颯太、そろそろ時間
中島颯太
中島颯太
おお、今行く!
白濱(なまえ)
白濱あなた
気をつけてね
中島颯太
中島颯太
サンキュー!
そうして3人が部屋を出て、壱馬くんが寝ているベットのそばには私と樹くんが残った。



樹くんはなにも用事ないのかな?



それなら……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
あの、樹くん、申し訳ないんだけど、美紅ちゃんの様子見ててもらってもいい……?見てくるだけでいいから
イヤかもしれないけど……でも、もし美紅ちゃんが今外に出たら、私みたいに敵の暴走族に狙われちゃうかもしれない。



そうなったら、総長の壱馬くんは寝込んでいるし、不安すぎる。



……私が行ってちょっとでも話しかけたら、絶対イヤがられるし。
藤原樹
藤原樹
……わかった
樹くんはそう言うと、しぶしぶ部屋を出ていった。



ふう。さてさて、壱馬くんの様子はどうかな……?



ピトッと額に触れると、すごく熱い。



氷枕はよく冷えてるから、少しでも楽になるといいんだけど……。
川村壱馬
川村壱馬
……う……ん……
あ……目、覚ましちゃったかな?
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん……?起きた?
うっすらと目を開けた壱馬くん。



わっ……すごいドキッとした……。
川村壱馬
川村壱馬
……う……頭いてぇ……
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん、39度あったよ……
川村壱馬
川村壱馬
……まじか
ううーと唸って額をおさえる壱馬くん。
白濱(なまえ)
白濱あなた
薬ある?飲んだ方がいいと思うんだけど……
川村壱馬
川村壱馬
……飲む。引き出しに……頭痛薬あるはずだから、取ってくれ……
白濱(なまえ)
白濱あなた
わかった
薬を取り出して水を渡す。
川村壱馬
川村壱馬
……ありがとな
壱馬くんはそう言って受け取って薬を飲んだ。



少し経つと薬が効いてきたのか、ちょっとずつ顔色が良くなってきた。
川村壱馬
川村壱馬
看病、ありがとな
ぼーっと顔が火照る。



感謝されるだけで、ありがとうって言葉がかけられただけで、こんなに真っ赤になってしまうなんて。
白濱(なまえ)
白濱あなた
い、いいえ……
なんとかそう答えて、手の甲を頬にあてながらさりげなく熱を冷ます。
川村壱馬
川村壱馬
そういや他のヤツらは?
白濱(なまえ)
白濱あなた
あ、樹くんと美紅ちゃんは向こうにいるよ。3人は出かけたの
川村壱馬
川村壱馬
そうか……
そう言うと額を触った。
川村壱馬
川村壱馬
……39度か、解熱剤取ってくる
白濱(なまえ)
白濱あなた
わ、私が行くよ!壱馬くんは寝てて?
こんなフラフラな状態なのに起き上がったら、倒れちゃいそう……!
川村壱馬
川村壱馬
……悪い、じゃあ頼む。キッチンの引き出しに入ってるはずだから……
白濱(なまえ)
白濱あなた
わかった、ちょっと待っててね
そう言って部屋を出てキッチンに向かい、引き出しを開ける。



あったあった……。



ちらっと部屋を見渡すと、美紅ちゃんと樹くんは離れたところでお互いスマホをいじっていた。



美紅ちゃんはかなり不貞腐れている様子だけど、樹くんが同じ部屋にいて見てくれてるから大丈夫だよね。



私はとにかく、壱馬くんの看病しなきゃ!
白濱(なまえ)
白濱あなた
持ってきたよ
川村壱馬
川村壱馬
ああ、ありがと……
白濱(なまえ)
白濱あなた
いいえ
そう言ってから薬をわたし、壱馬くんの額にそっと手を当てる。
白濱(なまえ)
白濱あなた
やっぱり熱下がらないね
じーっと壱馬くんの顔を見ると、どんどん赤くなっていく。
白濱(なまえ)
白濱あなた
か、壱馬くん、解熱剤飲んだのにもしかして効いてない!?
川村壱馬
川村壱馬
い、いや大丈夫だ
白濱(なまえ)
白濱あなた
そ、そう?
少し焦った気持ちを落ち着けて、ほっと息をつく。



そうしているうちに、ふと美紅ちゃんの事を思い出した。
白濱(なまえ)
白濱あなた
あの……壱馬くん
川村壱馬
川村壱馬
ん?
白濱(なまえ)
白濱あなた
……美紅ちゃんはこの部屋に入れないの?
川村壱馬
川村壱馬
……あなた以外の女は、入れない
壱馬くんの言葉に顔がかあっと熱くなった。



壱馬くんも真っ赤……。



ドキン……ドキン……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
あ、ありがと……
素直に嬉しくて、ついお礼を言ってしまった。



あ、怪しすぎるよね……!
川村壱馬
川村壱馬
なにが……?
白濱(なまえ)
白濱あなた
いや、その……まあいろいろ……
川村壱馬
川村壱馬
……こっちこそ。お前看病うまいのな
白濱(なまえ)
白濱あなた
そ、そんなことないよ。でも少しは楽になった?
川村壱馬
川村壱馬
ああ、結構回復した。薬も効いてきたんだろうな
白濱(なまえ)
白濱あなた
よかった
心からほっとする。
白濱(なまえ)
白濱あなた
あ、もう1回熱計って?
川村壱馬
川村壱馬
ああ……
ピピピピッとなって壱馬くんから渡させた体温計を見ると。
白濱(なまえ)
白濱あなた
ちょっと下がったね
37.5度。まだ熱はあるけど、だいぶ下がった。



解熱剤のおかげかな?



なんにせよよかった……。
川村壱馬
川村壱馬
……寝る
白濱(なまえ)
白濱あなた
うん、それが1番だよ
私がそう言うと、壱馬くんは静かに目を閉じた。

白濱(なまえ)
白濱あなた
おやすみなさい
川村壱馬
川村壱馬
……おやすみ
壱馬くんはそう言うと目をつむって、まもなく規則正しい寝息が聞こえてきた。



ふふっ。さっきも思ったけどなんだか寝顔かわいい。



あ、遅くなるかもしれないし、パパ達に連絡しとこ。



電話をかけて伝えると『壱馬くんは大丈夫か!?』とか『うちの者を誰か行かせた方がいいか!?』とかすごい勢いで言われたけど、私はひとこと『大丈夫』と返して電話を切った。



ふぅ……。



じゃあ壱馬くんが起きるまで、私は本でも読んでいよっと。



私はそう思って一度部屋を出てカバンの中から本を取り出した。



__少したって、壱馬くんが目覚めた。
川村壱馬
川村壱馬
う……んん……
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん、起きたの。調子はどう?
本を閉じて壱馬くんを見る。
川村壱馬
川村壱馬
……まあまあ……
まあまあ……ど、どうなんだろ?
白濱(なまえ)
白濱あなた
あ、氷枕、変えようか?
川村壱馬
川村壱馬
ああ、頼む……
私は壱馬くんに微笑みかけて、氷枕を受け取ると氷を入れ替えに部屋を出た。

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