第16話

4,683
2020/12/23 07:29
【壱馬side】

吉野北人
吉野北人
行っちゃったね……
ぽつりとつぶやいた北人に、俺はふいっとそっぽを向いた。



……あいつが、誰か他の男といるところを見たくない。



多分そう思ってるのは俺だけじゃなくて、北人と樹もだ。



にしても……。



さっき、あなたの肩に回されていた手を思い出す。



……誰だよ、あいつ。



あなたも『慎』って呼んでたな。



名前で呼ぶほど親しいってことか。



ついでに、触れられても振り払わないくらいに……。
吉野北人
吉野北人
っていうか壱馬、珍しく挑発的だったよね
藤原樹
藤原樹
……俺も思った
川村壱馬
川村壱馬
ああ……なんか、自然と
けど、あなたの肩を抱いたあいつに『どういう関係?』なんて言われて、なぜだか悔しくなった。



知り合い、友達……。



あなたのことをそんな言葉では片付けたくなくて。



思わず口から出た『大切なヤツ』という言葉は、決して嘘じゃない。
吉野北人
吉野北人
……あいつ、あなたちゃんと付き合ってるのかな
考えないようにしていたことを北人に言われて、心臓がドクンドクンとイヤな音を立て始めた。



べつに、あなたに恋人がいたって何の不思議もない。



亜嵐さんにそっくりなあの容姿でモテないはずもないし。



けど……。



なんか、考えたくねぇ……。
藤原樹
藤原樹
……あいつとあなたがどんな関係か知らないけど、あいつはあなたに想いを寄せてると思う
樹の言葉に北人がうんうん、と頷く。
吉野北人
吉野北人
間違いないね!ここはポジティブに付き合ってないと仮定して、あなたちゃんがあいつに振り回されないように竜龍一同で見守ろう!
川村壱馬
川村壱馬
……賛成
吉野北人
吉野北人
お、総長のお達しだ。じゃあけってーい!
北人がそうおどけて、少しだけ空気が和らぐ。



あなたとあいつの関係がどういうものかは知らねぇけど、初めから恋人同士って決めつけんのもバカらしいしな。



……って、何必死になって考えてんだ、俺は。



俺は自分の気持ちに少し首をかしげながら、教室に戻った。

プリ小説オーディオドラマ